上板町立高志小学校 Live Kitchen へ

食育

こんにちは。食育係の樋口です。

今年度、上板町立高志小学校の食育事業の取り組みに参加させていただくことになりました。

高志小学校では文部科学省の「社会的課題に対応する学校給食活用事業」を受けて実践研究を進めています。高志小学校を中心に、給食センター、地域の生産者、上板町役場、JA、民間企業、教育委員会のメンバーらで構成された上板町推進委員会が設置され、「食品ロス」の削減や「地産地消」の推進といった社会的課題を解決するための持続可能なシステムづくりの実証に向けて、実践を進めています。

今回は、実践研究の一環として8月初旬に開催された「ライブキッチン」の様子をお伝えします。

当日の会場「技の館」に5・6年生の児童らと保護者、地域の方々140名が集まりました。

「ライブキッチン」は、東京都麻布にあるフランス料理店フレンチモンスターの池尻シェフ、そしてFood Hub Project の笹川(かまパン製造責任者)が子どもたちの前で徳島産の食材を使った料理やパンをつくるプロセスを見せる、そして一緒にフランス料理を食べるというイベントでした。フレンチモンスターを経営する錦織さんが幼い頃過ごした地、徳島。その思いを胸に東京でレストランを開業されてからも徳島県産の食材をお店で提供されているそうです。錦織さんのフランス料理やワインにかける想いを奥様である錦織信子さんからお聞きできる時間もあり、今回のご縁をうれしく思いました。

なかなか食べる機会のないフランス料理を子どもたちと一緒に食べられるなんて。しかも、つくっている場面を見られるなんて…!!今回の企画は上板町で養豚業(金時豚)を営む納田さんとフレンチモンスターさんのつながりがあって実現した機会だそう。この場に笹川、浅羽(管理栄養士/食育係)、 樋口が参加させていただきました。

池尻シェフのライブキッチン

和食の主食はごはん。フランス料理の主食はパン。Food Hub Project からは、笹川がフランス料理に合わせるパンを焼いていきました。時間や場所の都合でパンが焼き上がる場面を見てもらうことは叶いませんでしたが、この日のために「神山小麦」を使用した3種類のパン(非売品)を焼き上げ、会場に持っていきました。

かまパンから見た朝焼けの空。この何時間も前からパン屋の朝は始まっています。

当日の朝、かまパンにて。

神山小麦を20%配合したバゲット

神山小麦を100%使用した“カミヤマ100”

神山小麦を40%(粗・細挽き)配合したカンパーニュ

ライブキッチンの会場である技の館に到着したのは9時ごろ。会場のセッティングや準備で先生方も忙しく行き来しながら児童らの到着を待ちます。

高志小学校の5・6年生の児童と保護者、地域の方々を含めると140名のランチ。2部制でしたが、前日の仕込みから当日の料理提供までのオペレーションは大変だったに違いありません…。

池尻シェフと給食センターの調理員さんのチームで作り上げるフランス料理は、オードブル、魚料理、肉料理が順に運ばれてきます(料理の写真を撮りそびれた…)。それに合わせてパンもサーブしていきました。

当日サーブする時に使った木の板は神山杉。地元(神山町)の方に分けていただいたものです。

頭の青いバンダナは5年生からのプレゼントでした(5年生の藍染め作品)

食べている合間に、樋口からFood Hub Project の概要を説明し、笹川からはこの日のパンの説明と小麦の話を。

「おいしい」という声がその場で聞こえてくるのがライブの良さ。神山町の店舗でもお会いできればうれしいなぁと思います。

「フランス料理とパンは形が違うけどそれぞれに食文化があり少しでもみんなと触れることが出来てよかった。 また作り手も食べる人も同じ『楽しもう』を共有できたことが私にとって幸せな時間でした。」と笹川。

後の振り返りミーティングの場で池尻シェフと給食センターの栄養教諭のお話がとても印象に残りました。

  • 前日の仕込み、久しぶりに“バカ騒ぎ”して「料理をつくるって楽しいなぁ〜」と再確認できた。給食センターのチームが素晴らしかった。この人たちと仕事ができて楽しかった。(デモンストレーションと食べる会場が離れていたので)子どもたちが食べている様子は見られなかったけれど、先生方からの報告を受けて感無量。(池尻シェフ)
  • 給食はいつも1,200食をつくっている。「おいしく」は前提だけど、「時間内に」つくることが何より優先にされる。今回池尻シェフから、味・温度を保って提供することを学んだ。また、盛り付けにもひと手間かけることで見栄えもかわることも学んだ。給食にもさっそく生かしていきたい。(栄養教諭/中野先生)

地域のつくり手さんとシェフとの出会いから生まれたコラボレーションが、学校現場で地域の人たちを巻き込んで実施されたこと、それに参加させていただけたことは、わたし自身にとっても大きな経験となりました。

いただいたお菓子「月へ 鳴門へ」

武田校長先生のお話に出てきた言葉をいくつか噛み締めながら、わたしも自分がいる場所で考え続けたいと思っています。
「高志小のビジョンはCo・クリエイション『共につくっていく』。新しいアイディアがどうやったら実現できるか、をいつも考えている。」「今回の取り組みは、ストーリーをつなぐための“イベント”。ここでつないだものを発信していく。それが社会をつくっていくし、そこから社会が変わっていく。あきらめないこと。」

今回高志小学校で取り組まれている実践研究は1年間の事業だそう。次年度以降も継続的に取り組んでいけるような持続可能な仕組みをつくるためには何が必要なのか。Food Hub Project のビジョンと重なる部分もあり、自分ごととして考えさせられます。「小学校」という一つの拠点があり、「給食」を軸に進めていくこの実践研究は、上板町の「人」を含む「地域」の良さがたくさん含まれているようにも思います。全県へ波及する時に、“軸”になる仕組みは何なのだろう。そんなことも考えながら、引き続き高志小学校の取り組みに関わっていきたいと思います。

この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

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