徳島市・名西郡 給食部会の研修会へ

食育

研修会のテーマは「地産地食」
研修会のテーマは「地産地食」

食育係の樋口です。

小学校の先生から研修の講師依頼のお電話。「楽しく学びになる研修にしたい。中身を考えるところから一緒に考えてもらえないか」という内容。研修開催前に担当の先生や校長先生と3回ほどお会いして相談させていただき、徳島市、名西郡の給食担当の先生方が集まる夏の研修会に行って参りました。

小学校の家庭科室は冷房のある施設が少なくこの時期の研修会場としては不向き…。今回は朝日産業さんのクッキングスタジオをお借りすることができ、気持ち良く開催することができました(設備・備品も勢揃い。素敵な会場を快く提供してくださり…感謝しかありません)。

地域の学校と取り組む「地産地食」のはなし

ベテラン、プロの先生方を前に、ドギマギしながら小学校の取り組みを中心にお話しさせていただきました。先生方とのやりとりで特に印象に残っているものを記しておきます。

●産食率●

かま屋で出している「産食率」の話や、昨年の神領小1年生の取り組みを紹介しました。徳島市の給食センターの地産地消の取り組みについて伺ったところ、やはり同様の算出方法で県産食材の使用割合を出しているそう。数値は50%前後だとおっしゃっていました。
*「産食率」は、食堂 かま屋 における「地域で育てて、地域で食べている」割合(%)を定期的に測定していくための、私たちが定める基準です(Food Hub Project 「産食率と献立」より)。

かま屋では月ごとの「産食率」を皆様にお伝えしています(かま屋通信 2019年8月号)

●教科横断のプログラム●

ある小学校の栄養教諭の先生より、他教科と関連させながら楽しく取り組める食の授業(クイズ形式)を実施しているという紹介がありました。「育てる」「つくる」「食べる」ことは、家庭科はもちろんのこと算数、理科、国語、社会や英語、家庭など様々な教科の学習とつながる(もしくは興味や関心が向いていく)ことに気づきます。学級担任制で複数教科を受け持つことが多い小学校の先生だからこそ、様々な教科の内容との関連が見えやすいのではないか、というのはわたしの実感。そんな情報交換を町内、県内の先生方とやってみたいなー、と思いました。

●地域のつくり手さん●

大豆の栽培から豆腐づくりまでを行う食育プログラムに豆腐職人さんが参画してくださっているのを知って「自分のまちでもやってもらおう!」と話していらっしゃる先生も。

先生じゃない大人が授業に入るって、とてもいいなぁと思います。学校には多様な子どもたちがいるように、まちには多様な大人たちが暮らしています。つくり手さんたちと学校で出会えて一緒においしいものが作れたら、「つくる」ことや「食べる」ことがより身近になる気がするのです。これはつくり手さんのご協力あっての取り組みですが、予算や時間の確保、先生方や学校、町のバックアップがあって実現していることを考えると、どの地域においてもすぐに実行…!という訳にもいかないのだと想像できます。先日、「子ども時代の体験が、その後の生き方に何かしら影響していたり、響いたりしているよね」「子ども時代って大事〜!」と身近な大人たちと盛り上がりました。「食べる」ことを通した豊かな体験がすべての子どもたちに行き渡りますようにと願いつつ。

神山小麦で“無敵の即打ちうどん”づくり

さて、後半の研修はうどんづくり。前半と同じくテーマは「地産地食」です。何かみんなで食べられる実習ができるといいよね、と栗岡先生(給食部会担当)と相談して「うどん」をつくることにしました。うどんに使う粉は昔から「中力粉」、Food Hub Project つなぐ農園で栽培している「神山小麦」を使うことにしました。神山小麦は神山町の農家(白桃家)で70年以上自家用の味噌や醤油をつくるために栽培されていた小麦です。今年度からは、地域の高校生の授業の一環として耕作放棄地を整備して小麦を育てるプロジェクトも進行中。今後、栽培から加工までのプロセスもより見えやすくなっていくのかなぁと期待しているところです。

粉以外の材料は、水、酢、海塩。これらも徳島でつくられたものや徳島産のものを使いました。
水:剣山の天然水
酢:山屋酢醤油店さんの純米酢(徳島市佐古)
塩:鳴門産

さ、麺を打ちます。こねずに、踏まずに、できるんです。

水回し(神山小麦100%使用)

つるつるすべすべ、ツヤ子さん

2分割してまな板で伸ばしやすいサイズに。

4つのグループ、それぞれとても美しい麺が仕上がりました。ざる、釜揚げ、つけ麺、お好みの加減に茹で上げます。

「この茹で汁、捨てないで!(おいしいから!!)」

「蕎麦みたい(色が)」の声、多数

「地産地食」がテーマの研修会なので、先生方には “麺に合う地元食材” を持ってきていただき、それぞれ紹介していただきました(地域で採れたものの他、地域のお店で買ったものも含まれています)。ミニトマト、すだち、鰹節、ねぎ、ミョウガ、さつまいも、オクラ、きゅうり…などなど。

茹で上げた麺の上に、お好みの地元食材をたっぷりのせていただきます。

さてさて麺の出来はいかがだったでしょう。「もちもちしている」「甘い」「噛めば噛むほどおいしい」「旨味を感じる」「醤油だけで十分おいしい」などなど、神山小麦本来の風味とあわせて、「粉から簡単に作れておいしいんだ!」ということを体感していただけたこと、よかったです。茹で汁がこれまたとてもおいしくて、びっくりされている先生方がいました。麺の塩分と粉の旨味に加え、わずかなとろみがついて葛湯のような感じになるのですが、そのままでもゴクゴク飲みたいほどにおいしいし、少しの醤油とすだちを絞ればさらにおいしい。

大昔から、人はその土地に合った農を営み、その土地で採れる食材を使いながら、その土地固有の豊かな食文化を育んできました。現代では幸か不幸か均一化された食べ物が流通・消費の大部分を占め、食べ物からその「土地」を感じられる機会は少なくなっています。日々「食べる」が中心になる現代の大部分の人たちにとって、「育てる→つくる→食べる」という“当たり前” の体験は、少しばかりの豊かさを感じられる時間にもなっている気がしています。「食べる」ことの周辺事象をいかに「自分ごと」にしていくか、そこが食育なんじゃないか…と思う今日この頃。

今回の研修の機会を与えてくださったこと、栗岡先生と出会えたことに感謝して、わたしはまた「なんのための食育?」を考え続けていきたいと思います。

この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

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