神山でつなぐ・つながる 5年生の「お米プロジェクト」①種の選別

つなぐ授業レポート食育

Food Hub Project の食育授業の核となっているのが5年生の「もち米づくり」。20年以上前に、フードハブ農業指導長の白桃茂(しげ)が小学校の前の田んぼで「子どもたちのために」と始めた取り組みが、ずっとつながっています。

3年前にフードハブが設立され、同時にメンバーも小学校のもち米づくりに加わるようになり今年で3年目。今年度も5年生ともち米プロジェクトが始まりました。初回は「種の選別」の様子をお伝えします。

種をつなぐ。

フードハブが5年生のもち米づくりに一緒に取り組むようになって、始めたことがあります。それは、校内で「種」をつないでいく、ということ。

5年生から4年生(次の5年生へ)

Food Hub Project 「つなぐ」食育の方針より。

(「食育の方針」の続きはこちらからご覧いただけます。)

小学生が育てる「もち米」の種は、神山町で70年以上継がれてきた種。品種名はありません。少し黄色味がかっていることから「よごれもち」と呼ばれ、70年以上この地域を見守ってきた「おいしくて強い」もち米の種です。

種の話は、農業長の白桃から。

ちょっと難しいけれど、F1の種と、固定種(在来種)の話をしました。

神山の味

白桃淑行さん(農業長・白桃の祖父)がスペシャルゲストティーチャーとして授業に来てくれました。

(写真右)白桃淑行さん

ちょっと昔、神山町には20種類くらいの在来種(代々継いでいく種)があったそう。年々その数は減っていき、残ったもち米がこれ。「どんな種が残っていくんですか?」「病気に強い種ですか?」と尋ねたら「ほれと、おいしいやつ」と。

おいしくて、強い「もち米」の種。みんなに好まれる、まさに「神山の味」です。

育つ種、育たない種。

70年以上種を継いできた在来のもち米「よごれもち」

6年生から引き継いだ「もち米」の種は、「選別」をして選り分けてから、種まきをします。

種まきに使いたい種は、中身の詰まった種。まずは選別するための塩水を作ります。

塩水につけて浮いてしまう種は、中身がない種なのです。

塩分濃度の目安は、生卵が水の中で立ち、少し浮くくらい。まだ「濃度」の勉強はしていないので少し難しかったかもしれませんが、生卵という身近な食べ物で大まかな濃度が分かるっていうこと、知ると面白いです。

塩水の中に種をすべて入れ、浮いてきた種をすくいとります。

浮いてくる種が多いので「かわいそうに」という声が子どもたちから聞こえてきました。

選別した種は、よく洗って塩水を落とします。

白桃淑行さん(写真右)も子どもたちの様子を見守ってくれました。

洗った種を広げて乾かします。

乾燥させます。

これで今日の作業は終了。

2日ほど乾燥させたあと、熱い湯で消毒し、一定温度の水の中に浸し、種が揃って芽を出せるよう準備をします。

この作業はフードハブで行います。

1週間後の「種蒔き」まで、種の管理は Food Hub project の農業チームが行います。「田植え」までたくさん続く「種」の作業。一つひとつに外せないポイントがあり、3回目のわたしも毎回新しく知ることがたくさんあります。

みんなの種が無事に芽を出すように祈りつつ、農業チームに託すことにします。

 


今回は、「種の選別」作業に入る前に「世界のお米」の話をしました。その様子も紹介します。

世界のお米

日本のお米は普段から食べているから味や見た目はよく知っているはず。じゃぁ、日本以外の国の「お米事情」ってどうなんだろう?とちょっと日本の外に飛び出てみました。

世界の3大お米であるインディカ種、ジャポニカ種、ジャバニカ種について(食育係:樋口)

3種の米、それぞれどの種類か分かるかな?

世界の中では主流の「インディカ種」のお米は、細長くて特徴的。子どもたちは触ったり、匂いを嗅いだりしながらすぐに言い当てました。

見分けがつきにくかったのは日本で主流の「ジャポニカ種」と、ヨーロッパなどで作られているけれど日本ではあまり見かけない珍しいお米「ジャバニカ種」。生の米だけではなく、炊いた米も食べ比べてみました。

いつも食べ慣れてるお米、一番人気でした。

日本では米は炊いてお茶碗に入れて食べることが多いけれど、米の種類によっておいしい食べ方も色々あるんだよ、という話をしながら、担任の先生がかつてタイに住んでいたという情報を伺っていたので、タイの「米料理」のお話を伺いました。

先生は細長いインディカ米(パサパサしている)を蟹チャーハンにして食べるのが好きだったようです(想像してよだれが出そう…←みんな)。余ったインディカ米で先生にチャーハン作ってもらえるといいね、笑。

ひぐちの気持ち。

70年以上も前から神山で育ち、つながってきた「種」を、校内で引き継いでいくという特別感。

今はまだ子どもたちには分からないかもしれませんが、時代を越えた作物の力強さやエネルギーを実感したとき、何を思い、どんなことを感じるのでしょうか。そのことを想像するだけで、わたしはこの「もち米づくり」の取り組みがとてもとても意義あるものに感じられてなりません。

また、その意義をしっかりと伝えていくことが Food Hub project の食育チームの役目じゃないか、とも思えてきます。

いよいよ次回は「種まき」です。


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この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

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