「地産地食」をお酒でも。
神山の米と湧水でできた、日本酒の復活!

つくる日本酒プロジェクト

かま屋 食育係の浅羽です。わたしたちが育てているお米を、ご飯として食べるだけでなく、日本酒としても「地産地食」にチャレンジしようと、昨年の春より日本酒プロジェクトが始動しました。

ただ、メンバー誰もお酒造りの経験はなく初めてで分からないことばかり、まずどうしたらお酒を作れるのか、市内にある酒屋の「おおさかや」さんにお話を伺うところからのスタートでした。
おおさかやさんは、自分たちでもお米を育て、酒蔵に依頼をして日本酒を仕込んでいます。最初に、日本酒に適したお米作りのこと、それから今は雑味を無くすためにたくさんお米を精米するのが主流だけれども、せっかく育てたお米の味が出せたらいいのではと、アドバイスをいただきました。

昨年から神山でお米を育てるところから始まっている日本酒プロジェクト。日本酒に使うお米はご飯として食べる品種のイクヒカリです。おおさかやさんからのアドバイスを受けて、通常よりも肥料を大幅に減らして栽培をしました。それによって日本酒では雑味となる米のたんぱく質量が減り、日本酒向きになるそうです。ただ、昨年は5月6月の雨が降ってほしいときにほとんど降らなかったり、9月10月の収穫時期に連続で台風がきたりと、悪天候に悩まされる1年でした。収穫したのは9月末。未熟なお米も所々ありましたが、天気予報で予測される台風を避け、この日にやろうとの判断でした。
採れたお米の収量は約200kg。別の田んぼで自分たちで育てた同じ品種のお米を加え、今年は250kgのお米と、スキーランドさんで汲ませてもらう神山の湧水 約300Lの水を使って、いよいよ日本酒づくりです。

鬼籠野の田んぼで育ったお米。酒蔵さんに、とてもいいお米と言っていただけました。

お米は無事に収穫できましたが、日本酒を仕込むには量が少なく、麹造り、精米となかなかうまく進みませんでした。
最初の大きな課題は、麹造り。日本酒造りでとても重要な工程のひとつです。まずは自分たちでやってみようということで作ってみましたが、味噌麹としてなら、神山のお母さんたちのお墨付きをいただくほど大成功。お酒の麹としては大失敗…。麹はお米のデンプンを糖に変える働きがあり、仕込みの最初の段階として重要なので、自分たちで作るのは諦め、麹を作っていただけるところを探すことにしました。でも、県内の麹製造メーカーに問い合わせても私たちが必要な40kg程度のものは引き受けていただけません。
お米の糖をデンプンに変える働きがあれば味噌や醤油の麹でもお酒が出来るとのお話もあり、普段私たちがお付き合いのある味噌や醤油メーカーの方にお願い出来るかも…。と考え、徳島県立工業技術センターに相談に行きました。ですが、「お酒はきっとできるでしょう、でも麹菌の働きが違うので味はどうでしょうか…」とのこと。やはり、日本酒用の麹で仕込むのが一番とのアドバイスをいただきました。

麹だけは買うことになるかもしれない、でもやっぱり自分たちのお米で作りたい…。そんな中、無理を言って麹造りの見学をさせていただいた徳島県 三好市の「三芳菊酒造」さんが、わたしたちのお米で麹をつくってくれることになりました。

みんなで麹造り。お米を蒸して冷まし、麹菌をふった後、榁のなかで温度管理をしながら48時間かけて麹が完成します。

また、次の課題は精米でした。一般的には、お米の表面にあるたんぱく質を削ることで“雑味”を減らし味をよくするなどの理由から、40%ほど精米をします。40%削ったお酒は精米歩合60%と表記され、精米歩合60〜50%未満では吟醸酒、50%以下のものが大吟醸酒と呼ばれています。

わたしたちがつくる日本酒で大切にしたかったのは「自然の味」。お米の味がする日本酒を目指し、一般的な日本酒よりは少なく、いつも食べるお米より少し多い20%を精米し、精米歩合80%で仕込みむことにしました。ただ、20%もお米を削ることはご飯用の精米機ではできません。酒米精米をしているところにお願いをしたのですが、量が少なすぎるために引き受けてくださるところが見つかりません。最低必要量は600キロ!多くのメーカーさんで使っているのがこの規格の機械で、ようやく少量精米の機械が見つかったのが岩手県の工業技術センターでした。
本当にたくさんの方から、色々な方面からアドバイスをいただき、ようやくお米、麹、水がそろいました。

本番の仕込みは、おおさかやさんにご紹介いただいた徳島市鮎喰町の吉本醸造さんにご協力いただきました。吉本醸造さんは明治元年創業の酒蔵さんです。
日本酒の仕込みに適した最も寒い時期からは遅れてしまいましたが、3月5日〜10日の6日間で無事に終え、3月下旬にしぼりの予定です。6日間のなかでも順調にお米が糖に変わっている様子が見られ、一安心しました。

仕込み用のお米を大きな釜で50分蒸します。蒸気とともにお米の香りがしてきます。

蒸したお米はさらさらとしていて、手でほぐした時にくっつかないのが日本酒向きでよいお米といっていただけました。

タンクに、お米、水、麹、酵母が入りました。仕込みを終えてからお酒の搾りまで20日間ほど。約400Lのお酒ができる予定です!

お酒の名前は「神山の味 2017」。これから作付けをするお米で、来年できるのは「神山の味 2018」。その年のお米や、仕込む時期、その時の気候など色々な条件によっても味が変わってくるので同じ味にはなりませんが、2017、2018、2019と、繋いでいきたい「神山の味」として名付けました。

お米、野菜を中心に、神山産の食材を使ったかま屋のごはん、かまパン&ストアのパン、加工品がありますが、この1年、産食率を考えるなかでも色々なかたちで「地産地食」ができることが分かり、うれしく思いました。毎日の食材、献立からこのようなプロジェクトまで、日々実践していくことで、その土地のものを食べることや農業がずっと繋がっていくと実感しています。

今回、残念ながら叶わなかったのは神山の杉を使った杉樽で仕込むこと。来年は、やりたい。まだまだ、神山の味の可能性は広がります!
どんなお酒ができるのか。美味しいお酒が出来ることを願い、とても楽しみです。その年の「神山の味」を、季節の料理と合わせて日本酒でも、みなさんに味わっていただけるこのプロジェクトが続いていったらいいなと思っています。
4月22日(日)には、みんなが初めて味わう「神山の味 2017」初しぼり試飲会をかま屋で開催予定です!

この日誌を書いた人

浅羽暁子

食育係/管理栄養士
浅羽暁子 (あさば あきこ)

食育係/管理栄養士。静岡県出身。企業の社員食堂に7年間勤務。前職で出会った支配人の真鍋よりフードハブ・プロジェクト立ち上げの話を聞き、”町の食堂”に親しみを感じて参加。元気の源は食べることと、走ること。

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