根を広げ幹を太らせる。
できることをコツコツと。

つくる神山の味

神山に来て4年目の春。例年であれば、桜が咲き、レンギョウやユキヤナギも街道を彩り、多くの観光客で町内が賑わう季節です。

毎年フードハブでは「桜の塩漬け」を使った製品を製造・販売しており、今年は桜の花を摘むところから携わりたいと、野間の粟飯原紀代子(あいはらきよこ)さんと一緒に作業をさせていただきました。作業の合間に「NPO法人神山さくら会(以下、さくら会)」の方達の想いを知り、心の温まるひと時となりました。

観光名所である「さくら街道」の始まりには、高齢化と過疎化が進む里山を再び蘇らせたい、という想いから始まった「さくら会」のみなさんの長年に渡る活動があります。桜の苗木作り、植栽、周辺の環境整備など、地域住民の方々の協力のもと、コツコツと積み重ねて来られた背景があることを知りました。活動は20年以上になるそうで、今年は約5千本の桜が見頃を迎えました。また「さくら会婦人部」の方々による「さくら料理教室」の活動では、神山にある食材と桜の花・葉を使った新しいスイーツや料理を提案されていて、食の発展にも力を入れてこられました。

今春の徳島新聞に、神山しだれ桜についてのコラムが掲載されており、その一説が私の中でフードハブの活動と重なり、心強く感じました。

“植えてすぐは、か細く、どうにも頼りない。やがて根を広げ、幹を太らせ、輝くばかりの青年期を迎える”
【引用:徳島新聞2020年3月28日鳴潮】

フードハブの活動は5年目。まだまだか細く、頼りないです。それでも、コツコツと続けていけば、根を広げ、幹を太らせることができるのではないかと。

新コロナウィルスの影響で、この春は町内のイベントも中止になりました。毎年この時期によもぎ団子を製造・販売してきた下分生活改善グループのお母さんたちにとっても寂しい春となりました。そこで、神山の食文化を受け継ぐ活動の一環として、よもぎ団子の作り方を学ぶ機会をいただき、そのお団子を販売することで少しでもお役に立てればと、毎週土曜日のよもぎ団子作りが始まりました。よもぎ団子作りは33年前からされているそうで、作業に取り掛かるお母さんたちの慣れた手つき、長年の勘、全てがお団子をおいしくする要素となっているなぁと感じました。

今まで当たり前だったことが今後も当たり前であるために、途絶えさせることなく受け継いでいきたい、と感じることが多かった春でした。

今年度の加工部門の目標は、地域の方々との関わりをより深めるとともに、神山の伝統的な食文化を受け継ぎ、次世代につなぐことを目的として活動していきます。今、自分にできることをコツコツと。いつか、また違う誰かに引き継ぐ時まで。

この日誌を書いた人

中野公未

料理人/加工係
中野公未 (さとちゃん)

料理人/加工係 神奈川県出身。都心の居酒屋や定食屋を中心に働く。都会での生き方に疑問を抱き、移住を決意。神山の土地と人に引き寄せられフードハブへ。”今、ここ”でしか経験できない事を、楽しみながら吸収中。

その他の活動

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