『かま通』で綴った神山での10年 「ことば」の中の「神山」と向き合いつづける

かま屋通信

 「読むことは人を豊かにし、話すことは人を機敏にし、書くことは人を確かにする。」16世紀のイギリスの哲学者の言葉だそうです。なぜ「書くこと」が人を確かにするのか?『かま屋通信(かま通)』が今号で記念すべき100号をむかえ、私たちはこの10年間、文章を書き続けることでこの問いと向き合いつづけてきたように思います。

 『文章心得帖』という本を題材にした「ことばは、社会そのもの」というエッセイ※に、「ことば」の中には、あらかじめ「社会」が含まれている。「ことば」と向き合うことは、そのまま「社会」と向き合うことである、と書かれていました。つまり書くという行為は、自分の中に社会が入り込み、その社会と自分が対話をし、その結果として文章が生み出されていくということです。神山で暮らし、働く私たちにとっては、「社会」を「地域」や「神山」とおきかえることができます。『かま通』の記事をこうして自分が書いているとき、「ことば」を通して自分の中に入ってきた「神山」と対話をしている。神山の畑のことや、地域のお母さんやお父さん、お店に来てくれるお客さんのことを心に思い浮かべながら自分の中に湧き出てくる「ことば」に丁寧に向き合っていく。それを自分たちの活動報告として、みなさんに伝えつづけてきました。

 また長年つづけることで町内外の方々から「毎月、読みよるよ」「今月、書いとったな」や、初めてお会いした方から「記事、読んでます」などと声をかけていただくことが多くなったそうです。書くだけでなく、多様な方からのお声がけの循環が自分たちのことばで伝えつづけることの自信にもなっています。

 上地さんをはじめとした「里山の会からの手紙」や神山俳句会さんの「俳句コーナー」など地域の方々の支えがあってこその100号でもあります(俳句会には一回しか参加せず本当に申し訳ありません)。それらの一連の行為の繰り返しや自分たちが書くことによって生まれる関係性の循環が、私たちをこの地域の中で少しずつ「確かな存在」へと育ててくれているのではないかと感じています。

 「確かな存在」とは、偽りがなく、自身の信念と行動が一貫していること、そして人や自然に対して常に誠実で真心を持ち続けることだと考えています。これは英語で「Integrity&Sincerity (高潔さと誠実さ)」と言い表されるそうです。AIやSNSの台頭により、過激な情報が真実よりも速く、広く拡散される現代において、個人としても事業としても「Integrity&Sincerity(高潔さと誠実さ)」に対する真価が問われています。その道のりは、遥か遠いものに感じられますが、そのような「確かな存在」に一歩でも近づけるよう、これからの10年も日々、皆で精進してまいります。今後ともご支援のほど何卒よろしくお願いいたします。

撮影:生津勝隆

※若林 恵. さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017. 東京: 岩波書店, 2018.

この日誌を書いた人

真鍋 太一

FHP支配人
真鍋 太一 (まなべたいち)

支配人(COO)愛媛県出身。2014年3月より妻子と神山町に移住。2015年度の地方創生ワーキンググループの検討会で農業長の白桃と出会い、フードハブ・プロジェクトの立ち上げに至る。社会とつながり「暮らすように働く」ことを企業の価値づくりに役立てるべく家族と友人たちを実験台に検証中。神山町にサテライトオフィスをかまえる広告制作会社 ㈱ モノサス デザイン係、東京 神田にあるレストラン「the Blind Donkey」の支配人も務める。

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