高校3年間のいろんな出会いが、
自分を少しずつ変えた。

かま屋通信

かま屋でアルバイト中の高校生 鍛くん(HOPE)のニューヨーク研修記をお送りします。

昨年の夏は鹿児島へ。あれから一年いろんな出来事があった。そしてあっという間に高校三年生になり、進路を考える時期に突入した。僕は料理をしたい。結論から言うと僕は調理師専門学校へ行くことが決まっている。料理店への就職を少し考えていた時もあったが、この選択でよかったと思う。

そしてこの夏、ニューヨークへ行き、たくさんの人や料理に出会った。きっかけは今年5月までの1年間余り、シェフ・イン・レジデンスでかま屋を訪れていたデイブの「ニューヨークへ来い」という一言。Daveに会いに行くことと、料理の事、ハンバーガーのリサーチが研修の大まかな目的だ。なぜハンバーガーかと言うと、学校の文化祭でハンバーガーを販売する計画だからだ。クラスの女子たちが「ハンバーガーを作りたい!」と言っていた事に便乗して「ニューヨークへ行くついでに」という事で、ハンバーガーのリサーチをしてきた。フードハブ支配人の眞鍋さんが2週間のNY研修を計画してくれ、台風10号が迫る中、予定を前倒し、何とかNYへ出発した。

前半の1週間はNYブルックリンの4軒の店で計6回、厨房に入らせてもらい仕込みなどを手伝った。Daveがシェフを務めていた店にも入った。まず驚いたのは料理を地下で作っていた事だ。限られた土地を有効に使うためだと思う。地下にあるせいか少し狭かった。しかし狭い空間だったからこそスタッフとの心の距離も縮まり楽しく作業できた。様々な野菜をカットしたり、スープストックになる骨から脂身を切り分けたり、たくさんの仕込みをした。中でも2日間入った『マーローアンドサンズ』というお店はお世話になった。お店に入ると小洒落たカフェがあり、奥に進むとバーが。夜になるとシェフ、パッの料理が振舞われる。彼のおばあちゃんが日本人ということもあり日本から影響を受けた料理がたくさんあった。オープンな雰囲気で外のベンチでもご飯が食べられ、繁盛していた。

中でも印象的だったのは、食材を専用の乾燥マシンで乾燥させパリパリになったものをミキサーで粉にした事。例えばネギを粉にしてネギパウダーにして料理の仕上げパラパラとかける。「こんな面白い方法があるのか。いつかやってみたい!』と思った。実際に調理現場に入れた事はとてもよかった。そもそも現場に入れた事が初めてだったので、動きや緊張感を体感し、「これが現場なのか」と実感した。ニューヨーク研修二日目の時点で既に1週間くらいたった気分だった。日々の生活が濃密だったためそう感じたのだと思う。

旅の2週目、遂にDaveに再会する事ができた。Daveは今、アップステイトというニューヨークから車で二時間離れた自然豊かな町の農場で働いている。その農場でパーティーの料理を手伝うことになっていた。再会したその日に『ブルーヒル』という有名なレストランでデイブにご馳走になった。そこでは特別に調理場を見せてもらう事ができ料理の裏と表を知った。美味しい料理を食べるお客さん。黙々と料理を作り提供する料理人。静かな客席とは大きく違い、調理場はまるで戦争をしているようだった。バタバタした調理場に鳥肌が立ち「これが料理の世界なのか」と思った。今までは皿に盛られた料理を見て「すごい」「美味しそう」と感じるくらいだったが、美味しい料理を提供する事がどれだけ過酷なのかわかった瞬間だった。同時に、僕はあえてこの店のような過酷な環境で働き、調理技術を身に付けたいと思った。(若いうちに)

なぜなら僕は一流の料理人になりたいからだ。

そのためにも基礎基本を一から学べる調理師学校へ行く。料理店の就職を考えていた時もあったが、働くとなれば、ある程度の技術や知識が無いとまともな仕事も与えてくれないと思った。日々の営業で忙しいというのに何も知らない人に、料理を教える暇はあまり無いと僕は思う。だから僕は基礎基本を一から学べる調理師学校へ行こうと思ったのだ。いよいよパーティーの食材集めに取り掛かり、農場で野菜を収穫したり買い物に出かけたりした。食材集めをする中で牧草しか食べていない羊を見たり、印象に残る体験をさせてもらった。

パーティー当日。パーティーは30人ぐらいの人で賑い、どの料理も「美味しい〜」という反応が帰ってきて嬉しかった。料理はデイブと二人きりで一から黙々と作った。作業中の会話はもちろん英語。言ったことが通じたり通じなかったり…。デイブも言いたい事が僕に通じていないもどかしさに苦労していた。デイブごめん。料理は日本食がテーマで、ナスとオクラのお浸しや菜の花の白和えなど。和食だけどデイブの華やかな料理へと変身した。

僕は居酒屋デイブの時も焼いていた焼きおにぎりを担当した。縦横1メートルぐらいの大きな網で焼くのは初めてだったのでいつも以上に苦戦してしまった。Daveと料理をするのは楽しいが”シェフ”と料理をするというのは緊張するものだ。そして焼きおにぎりを焦がしてしまった…。

アップステイトでの滞在も終わりデイブとの別れの時、「注意深く見ろ チャンスを掴み取れ」とアドバイスをもらった。旅の二週目、僕は「気配り」を怠っていることに気付かされた。デイブに朝のコーヒーを入れてもらったり朝食を作ってくれたりしたというのに僕は何もできなかった。その後の洗い物を指摘されてからやったものの「これではダメだ」と感じた。注意深く周りを見て自ら行動していくべきだ。そんなことを踏まえての「注意深く見ろ」のアドバイスだったと思う。デイブ今までありがとう。

この2週間のニューヨークで感じたこと、それは「出会う大事さ」だ。たくさんのシェフ、家に泊めていただいた人、変わった料理、今までお世話になったDave。いろんな人や料理に出会えて自分の考えが深まったり、違ったり、時々自問自答して自分なりの答えを頭の中で出してみたり…様々な出会いが自分にとって刺激的だった。そして今日までの高校三年間のいろんな出会いが自分を少しずつ変えたそしてニューヨーク研修を通して、自分のこれからをより考えるようになった。それは料理の明るい所だけでなく、過酷さも知れたこと、出会った人のそれぞれの生き方を見たからだと思う。自分がこれからどうなっていくかはわからない。今は「自分なりに頑張っていく」という目標を胸に、日々を過ごしていこうと思う

この日誌を書いた人

いただきます編集部


いただきます編集部 (一番、食いしん坊です。)

その他の活動

前へ次へ 閉じる