新解説・よもぎほたパウンド

つくる神山の味食べる

こんにちは。加工部門の山田です。暖かくなってきて、少しずつ春の気配が近づいてきました。今年もみんなが大好きな季節がやってきましたね。そうです。よもぎシーズンの到来です!

販売6年目に突入する「神山よもぎほたパウンド」。つくり手として毎年、「この季節がきた!」と気合いの入る時期でもあり、3月の途中から6月まではよもぎの緑にまみれた日々を送ります。ありがたいことに年々「美味しかった!」の声が増え、愛される商品に成長しました。作っている私がこんなことを言うのもなんですが、時に不思議に思うことがあります。

「なんでみんな、よもぎほたのことそんなに好きなん?」

1年のうちの4分の1の期間、よもぎに触れ続け、味見をし、「実は正直飽きてきちゃった」というのが本音です。これではいかん!と初心に戻り、自分なりにその理由を紐解いてみることにしました。

昔からこの土地で愛されている味をベースに

そもそも、よもぎほたはどうやって生まれたのか。話は6年前に遡ります。当時フードハブメンバーが「神山温泉に売ってる黒糖のアレ、異様に美味しいよね?」とざわついたお菓子がありました。それが徳島で昔から愛されている郷土菓子「ほたようかん」です。

「ほたようかん」とは

「ほたようかん」は蒸しパンのようなお菓子。徳島の方言で、中に空洞ができていることを「ほた」と呼び、ふわふわとしたスポンジのような見た目からこう呼ばれるようになった。黒糖を使用するため、濃い茶色の見た目が特徴で、もっちりとした食感とやさしい甘みがある。 

 

いわゆる蒸しパンの親しみやすさも持ちつつ、でも自分たちが知っているそれとは何かが違う。むっちりというかもっちりというか、すごく引きのある弾力性の高い生地の食感と、懐かしくどこか優しい味わいのおやつに夢中になりました。「これ、自分たちで作ろうよ!黒糖じゃなく神山の素材で」と話が進み、下分のおかあさんたちがずっと作り続けている「神山の味」=よもぎだんごからヒントを得て、よもぎを混ぜ込んでみよう!という流れで開発が始まりました。

よもぎでしか実現できない食感

最初はほたようかんの作り方に忠実にやってみましたが、どうもうまくいかず、いろんなレシピを参考に試行錯誤しました。

記憶は曖昧ですが、少なくとも10回以上は試作を繰り返したように思います。苦戦したのが「よもぎ」。ゆがいて処理したものを使うのですが、生地に混ぜる分量、よもぎに含まれる水分量や処理した時の細かさなど、それぞれの条件が「ほたようかん」に近づくように調整して、なんとかレシピに落とし込めるところまで持ってこれました。最も意識したのは「食感」。ほたようかんの特徴であるむっちり感がないと「ほた」を名乗れない。よもぎは繊維質な素材なので、香りを求めて入れすぎると繊維がたちすぎてガサガサの食感のケーキ(というか草のかたまり?)が焼き上がったこともありました。

素材としてのよもぎは苦戦した要因ではありましたが、バランスの良い分量や水分量の範囲内で作ると、よもぎにしか出せない食感を生むことが分かりました。のちに、「ほたシリーズ」として新たなパウンドケーキの開発を試みた際、他の素材を混ぜ込んで作ってみてもよもぎのようなむっちりと引きのある食感にはならなかったのです。

脳内を駆け巡るよもぎの香り

「よもぎを存分に味わえるパウンドケーキにする」というのも開発の大事なポイントでした。しかし、前述の通りよもぎの配合を多くしすぎると「草のかたまり?」と思ってしまうくらい不快な食感になります。繊維同士が絡み合って膨らみが悪く、口溶けも悪いただの青臭い物体になる。よもぎの「たっぷり」と「入れ過ぎ」の差は紙一重と言えるかもしれません。

理想とする食感を目指しつつも、口に含んだ瞬間に「よもぎ!」が脳内を駆け巡る味に近づけたくて、その塩梅を探って美味しいと感じるギリギリの量のよもぎを混ぜ込んでいます。

・・と、気づけばこんなに語れてしまいましたね(笑)。販売6年目も皆様にお楽しみいただけますように。

この日誌を書いた人

山田友美

おやつ係
山田友美 (やまちゃん)

その他の活動

前へ次へ 閉じる