2019年7月3日(水)
自分の中で『流れ作業』だったものに
『つながりや想い』が加わりました。
こんにちは、中野(料理人・加工係)です。ちょうど1年前の6月、『加工部門』が立ち上がり、私は製造担当になりました。かま屋に来られた際、食堂の奥にあるガラス越しの加工場で作業している姿を目にした方も多いかと思います。
東京の飲食店で料理人として働いていたとき目にしていたのは、四季を問わず当たり前の様に納品される野菜。そしてそれが当たり前になっていた自分自身の働き方。『作られた物を調理し提供する』という流れ作業に違和感を感じ、このままではいけないと思いました。何も知らないまま、旬の物も分からないまま生きて行くのは寂しすぎると思ったのです。農業に携わる人々の意志を感じられる距離でいたい、作られた物のプロセスを知りたい、それが私が神山に移住を決めた理由のひとつで、加工に携わるようになった大きな要因です。
私自身、加工品を作るのは未経験ですが、町の人達との関わりの中で学びながら、自分自身が体験し、記録として残すことで次の世代にもつないで行きたいという思いがあります。今、自分の中で『流れ作業』だったものに『つながりや想い』が加わりました。ひとつの商品が出来上るまでにかかる時間や苦労、商品の裏側がちらっと見えてきた気がします。
この1年間で出来た加工品は、下分の加工所で毎週作っている『カミヤマメイト』、阿川のレシピで作る『焼肉のタレ』、フードハブオリジナルの『ドレッシング』、シェフインレジデンスで来ていたデイブ監修の『トマトソース』、黄金すだちを使った『アチャール』、真夏に古葉を発酵させて作る『阿波晩茶』。初めてづくしの1年で段取りも分からず、本当に沢山の人に支えられ、アドバイスを頂きながら作業して来ました。そして皆さんの知識の多さ、段取りの良さを肌で感じながら、手間のかかる作業を引継ぎ、継続している事の大変さを実感しています。
例えば、阿波晩茶では、茶畑の管理、気候や四季に合わせての茶摘みや段取りを教わりました。生活改善グループのお母さん達とカミヤマメイトを作るときは、干し芋やみかんで一服したり、お昼にお漬物やもろみを頂いたり、会話の中で飛び交う神山弁をひとつひとつ教わったり。生活の中の他愛もない会話から神山の日常を感じる事が出来る場、下分でのお母さん達との関わりが、加工チームみんなの楽しみになっています。
日々の製造も、今のところ慣れてきたとは言えません。むしろ、製造を繰り返す中で難しさが増している気がします。例えば、同じ商品を安定した状態で大量に作ること。特にソース類の製造は、加熱中の火加減や火を止めるタイミングが非常に難しく、火を止めてからも余熱で煮詰まってしまいます。野菜や果実も状態が違えば、出来上りに左右する。お天気に影響される時もあり、一番ベストなタイミングを逃さないよう、私以上にみなさんが気にかけて連絡して下さり、何度も助けられました。
百聞は一見にしかず。自分の目で見て、肌で感じて、実態を通して体験した事は何よりの財産になると思います。そういった意味で、加工を通して神山での生活の知恵を、知らなかった事を、一つずつ『知る』事が出来たのは、私の人生においてはとても大きな意味があると思っています。
今年で2年目の加工チーム。去年の失敗や経験を活かし、また皆さまの力を借りながら、少しづつ成長して行けたらと思います。