体験を通した「実感」が人をつくっていく。
だから〝すべての子どもに農体験を〟

食育

2011年3月11日、ゴゴゴーという地響きとともに大波のように揺れる教室。30名の子どもたちの不安げな視線を浴び、全身で踏ん張り柱にしがみつきながら「大丈夫だよ!」と、大丈夫じゃない顔で叫んでいた日。それまで大切にしていた仕事への向き合い方や考え方、「よい暮らし」や「お金」を一旦横に置いて、どんな状況でも「生きてゆける」力を育んでいくには教育活動を通して何ができるのか。この日とその後しばらくの生活の中で、そんなことを考えざるを得なくなりました。(前職は小学校教諭)

2016年にフードハブ・プロジェクトに参画し、保育所、小学校、中学校、そして神山校で食や農に関するプログラムを実施してきました。子どもたちの反応やつくり手の声、考えを聞くうちに、当初考えていた「食育」への思いや考えが変化してきた5年間。「食育」から「食農教育」と呼び方を変え、「実感」と手応えをもって歩んできた結果、NPOの立ち上げという次のステップに進むことになりました。

NPOという枠組みに変わることで、より教育に特化した取り組みを推し進めていくこと。独自の事業を立て、子どもたちの活動に展開できる資金調達の仕組みをつくっていくこと。大きくはこの二点がNPO設立の理由です。わたしにとってはかなり難しいチャレンジですが、森山円香さん(神山つなぐ公社)をはじめとする設立準備委員のメンバーや、フードハブのメンバーに支えられ、ようやく船を漕ぎ始めました。

合言葉は〝すべての子どもに農体験を〟

体験を通して個々人に蓄積される「実感」と、それを紐付ける「学び」がうまく噛み合えば、これからを生き抜いてゆける〝ちから〟になるのではないか。今はそんなことを考えています(もう少しこの部分を分かりやすく伝えられるようにしたい)。

日々のごはんに焦点を当てると、わたしたちは多くの関係性の中で生きていることがわかります。農産物を育む畑や田んぼには水が必要。その水を辿れば川や山、そこで育まれる木々までつながります。わたしたちの生活排水は海まで流れ、そこで暮らす魚はいつの日か食卓にのぼります。つまりは、日々の行動が食卓にかえってくるということ。

分業化された暮らしの中では、ものごとや資源の循環、つながりを見聞きしたり、「実感」したりする機会は多くありません。だからといってスローガンのような暗誦しやすい言葉だけが子どもたちの行動目標にならないように、と思います。

「実感」したことをもとに、それぞれが自分の考えを持てるといい。「『いい』と教わったことだけど、なぜ良いのかの理由はよくわからない」と話していた子どもが「なぜいいんだろう?」と考え始めたら、とてもうれしい。子どもも大人も一緒におもしろがり、それが結果として学びにつながるような農体験の場を提供していきたいものです。

種まきから収穫までの農産物の成長。それらを調理して摂り入れ、排泄するまでの体の働き。前述した自然の循環や生き物も含めれば、「食環境」は壮大な探究テーマになり得ます。

農体験が、子どもたちの人生を楽しく、おいしく、自分らしく照らしていく、その手がかりの一つになることを、わたしもまた「実感」していきたいのです。

 


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地域ぐるみの循環型食農教育 を通して、こたえのないモノゴトに向かっていける感性を育み、〝より良い食環境〟をつくっていける社会を目指します。
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この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

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