作り手の想いを伝えていく場やきっかけを作る

食べる

出店者のみなさんと
出店者のみなさんと

私がフードハブで働き始めて、あっという間に3年の月日が流れました。

新卒からお世話になっている私は、1年目は日々の仕事に慣れることに精一杯。2年目は、その時のメンバーで唯一英語が喋れたので、シェフ・イン・レジデンスの担当となり、東京や鹿児島、京都でシェフとイベントを行う機会をたくさん頂きました。そして3年目の今年、かま屋では副店長となり、外部でやってきたイベントで学んだことを生かして、主にかま家でのイベントの企画発案をしています。

イベントを企画する時特に考えるのが、町外の方はもちろんですが特に神山の方に来てもらえるイベントにできるのかということです。私がかま屋で働き出して1〜2ヶ月の頃。第1回目の世界のカレーこんにちは!が開催されました。その時は、まだここでの仕事にも慣れていなかったこともあって、いつもとは勝手の違うイベントはとても大変で、疲れたぁという印象が強く残っています。しかしそれと同時に、神山に住んでいる人たちとカレーを出したり、神山の人たちがたくさん食べに来てくれた、その楽しそうな雰囲気はとても良い思い出としてありました。それから月日は流れた今年の8月頃、もう一度、あんな風に神山に住んでいる人たちが参加者としても、お客さんとしてもたくさん来てくれるカレーイベントをやろうという話が出ました。それに加えて今回は、マルシェも同時開催したい!と提案したことがきっかけで、世界のカレーこんにちは&神山ミニマルシェを開催することになりました。

私は、マルシェという場が好きです。色々なモノや人が集まっているあの場の雰囲気や、ワクワク感。作り手が自分の商品を直接思いを伝えながらお客さんに買ってもらえる場というのは、マルシェならではだと思います。それをかま屋の前で、神山の作り手さんとできたら、私たちが普段大切にしているモノへの思いをより伝えていける場が作れるのではと考えまました。そもそも、そんな場が作りたいと考えるきっかけになったのは、シェフ・イン・レジデンスなどを通して、かま屋以外でのイベントに参加することが増えたことがきっかけです。自分たちが普段やっている取り組みや作っているものについて、かま屋に立って、日々のルーティーンワークをこなしているとついつい目の前の事に精一杯になり、忘れがちになります。ですが、自分の言葉で伝える機会が増えたことで、自分の中で普段していることや、日々の取り組みのなかで伝えていきたいことが実体験と共に言葉として整理され、理解が深まりました。そんな中で、じゃあ今の自分にできることは何だろう、と考えるようになったことがきっかけでした。

前回のカレーイベントでは、神山に住んでいる方でカレーといえばこの人!という方々に作っていただきました。しかし今回のコンセプトは、【神山にいながら食べられる、神山の食材でつくる世界のカレー】。

各地のカレー激戦区(一番遠い方は鳥取から!)で作っていらっしゃるプロの方々に来ていただき、神山の季節の食材を使って、神山ではあまり食べるチャンスのない、スパイスカレーを作っていただきました。神山からは、バングラディシュで学んだ本格的な美味しいカレーを作っているもじゃさんにご協力いただきました。そのもじゃさんの参加してくださった感想がとても印象に残っています。

普段作る量よりも多い量のカレーを1人で作ってくれたもじゃさん。私たちと一緒にかま屋で夜遅くまで仕込みをしていました。そんなもじゃさんのカレーは、素材の美味しさを活かした、小さい子でも食べやすいマイルドなかぼちゃのカレー。一番最初に売り切れるとっても美味しいカレーを作ってくださったもじゃさんですが、生業としてカレーを作っていらっしゃる作り手さんたちと一緒にやったことで、もっと美味しいカレーを作りたい!というカレーへの情熱を加熱させ、とても刺激になったとおっしゃってくださいました。その日の売上は、全てカレー研究に費やしたとか。。。!

ただカレーを作りにきて終わり、ではなく、そこからさらに次に繋げたいと感じてくれるような場を作れたんだと感じられたことが嬉しかったです。

マルシェには、お世話になっている神山の農家さんや神山でお店をされている方々にお声がけをして、自由に出店していただきました。その中でも特に、かま屋に毎日新鮮なお野菜を卸して下さっている、里山の会さんたちの楽しそうな雰囲気が忘れられません。誰よりも早く準備に来て、お客さんと楽しそうに会話をしながら、時には引き止めながらお野菜を売ってくださっている姿は普段とはまた一味違う、生き生きとされた笑顔でした。当初は、あまり乗り気ではなかったようですが(笑)、終わった後には、「楽しかったわ!またあったら声かけてな」と言ってくださったときには、にやりとしました。

かま屋にもお野菜を卸してくださっている「里山の会」さんのブース

出店してくださった方がカレーを食べて、「カレーって言ってもこんなに色んなのがあるんやなぁ。面白いな」と面白がってくれたり、カレーを作りに来てくださった方たちが、マルシェで「なかなかこんな自然な野菜を直に農家さんから買う機会はないよ!」と生姜をキロ単位で爆買いしたり、コーヒーを飲んだり。カレーイベントとマルシェの2つがしっかり1つの場となって、お客さんとだけではなく、作り手同士が出会い刺激し合う場になっていたように感じます。

世界のカレーやマルシェを通じて、同じジャンルの作り手や違うジャンルの作り手が出会い、お互いに刺激を受け合う場が作れていたら嬉しいです。でも一番は、私自身にとって、モノづくりに真剣な人たちとたくさん出会えたことが何よりもいい経験になりました。私は何かのモノを生み出す作り手ではありません。でも、モノを生み出す作り手の想いをしっかり考え、伝えていく場やきっかけを作る、そんな作り手にはなっていけるんだと感じることのできた時間でした。

私が考える「作り手」は、プロとして何かを作っている人だけではありません。ばあちゃんたちから受け継いだ味を大切にして、美味しく食べてもらいたいと思いながら家族の為に毎日お料理を作っているお母さんたちも立派な作り手です。そんな町の作り手さんたちから、私自身が神山の味をもっと学んで行きたいです。でもせっかくなら自分だけじゃなくて、周りも巻き込んでお母さんたちの味を習いたい。それをかま屋で町内、町外の人たちに楽しみながら食べてもらって知ってもらえる場を次は作って行きます!乞うご期待!

この日誌を書いた人

石田 青葉

かま屋 副店長
石田 青葉 (あおちゃん)

その他の活動

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