<ご報告>居酒屋 デイブ Izakaya Dave
【Chef in Residence Program】
2018年7月5日(木) - 2018年8月11日(土)
- 場 所
- かま屋
- 日 時
- 毎週木・金・土曜
18:00~20:30(ラストオーダー20:00)
「デイブのご飯は、今の喜びや、ご飯を食べることそのものの楽しさを感じさせてくれる。ご飯って幸せな時間なんだ、って感じられた。」大東千恵(八百屋係/農園係)が居酒屋デイブの食材(野菜)を準備し、食べて感じたことをレポートします。
これは、Chef in Residence の一環のトライアルでもあります。そもそも居酒屋ってどういう日本の文化なのか。それをNYからの料理人、デイブが再解釈したらどうなるのか。
●Dave Gould(デイブ グールド)
NY生まれ、NY育ち。19歳から料理をはじめ、ブルックリンにあるMarlow & Sonsというレストランで料理人としてのキャリアを本格的にスタート。そこで、レストランを通じて地域の作り手のコミュニティーをサポートすることの重要性を学ぶ。Marlow & SonsとDinerの共同シェフを4年間務めた後、Whyth Hotelなどを経営するアンドリュー・ターロー氏と共にRomansをオープンさせシェフに就任。そこで、持続可能なかたちで育てられた肉や季節の食材を使ったイタリア料理を8年間手がけて現在に至る。
八百屋係/農園係:大東千恵です。
デイブの滞在が半年以上過ぎ、彼がいるのはもう日常。かまパン&ストアを往復しながら自身の仕込みをしたり、かま屋のランチの仕込みを手伝っていたり、肉を焼いていたり、カウンターでくつろいでいたり、カゴ付きのスクーターでどこかへ行ったり(川へ泳ぎに行くとか)、神山の暮らしも楽しんでいるようす。
この夏は、紫蘇をや山椒の葉を気に入り大量に使っていた。私たちには気づかないところで色々な隠し味に使っているようだ。暑い時期に「椎茸」はないよ、シーズンではないよと言うと「直売所に売っている」と言う。山へ入って野草をとって使ってみたり「ワイルドフェンネルの花が咲いている、それを使いたい」と言ったりして、ほんとうによく周りを見ている!
そうやって、デイブは使ったことがない食材を使ってみて、味見しながら、失敗したー塩辛かった、いまいち、とか言いながら、修正してゆく。
「どうして肉が上手に焼けるの?」
「プラクティス&プラクティス」
やってみる、やり直して工夫する量が、ほんとうに美味しいものを作ると、思わされた。
わたしは、居酒屋Daveの全ての野菜の準備を担当した。
デイブは、美味しく生食ができるもの、味がしっかり乗っているものやしっかり熟しているもの、が好みのようだ。自社“つなぐ農園”の野菜は、そんな発注に合わせて収穫する。わざとルッコラやズッキーニを取り遅らせておく、ミニトマトは当日直前に収穫するようにする、など。こういうちょっとした収穫のための仕込みは、私の楽しみでもある。
里山の会さんの野菜も注文する。上地さんといつも以上に色々な話ができたことが楽しかった。味がのっているかまだ若いかどうかまで聞くこともある。かま屋のランチの発注とも関わりながら、野菜の全体的な動きを知ることができたことも、いい経験となった。
じゃがいも、人参、赤玉ねぎ、にんにく、トレビス、レタス、キャベツ、フェンネル、バジル、ミニトマト、万願寺とうがらし、ズッキーニ… 私が育てた野菜もたくさん使ってもらった。
そうして、オール神山の野菜の、スペシャルな料理が作られていく!
写真は撮れなかったけれど、他にも
・フェンネルサラダ ‐紫蘇とピスタチオ、味噌のビネグレット
・いんげんと赤じゃがいものサラダ アンチョビマスタードドレッシング
・焼きパッケリ ‐ じゃがいも、すだち鶏、チーズ、バジル詰め
・リコッタケーキ シナモンバジルアイスクリーム with コンポートブルーベリー
などなど。
調理の所作の美しさも魅せられる。
そしてその瞬間を、躍動感あふれるキッチンワークで見せて共有してくれるのだ。
収穫したての味わいも、料理するときの香りも。混ぜたり溶けていく様子、肉油の滴る具合とか、たぶん。
料理を五感で楽しんでいるようだ。
目の前で料理が出来上がって行くライブ感は、カウンターに座る醍醐味。
ある日、ズッキーニの大きめが欲しいという発注があった。
カウンターでズッキーニのサラダを食べながら「ズッキーニは大きめの方がザクザクとした食感がして美味しい」との声かけに納得したのだった。
そういう話をしながら自分の育てた野菜を食べることができるって、ほんとうにうれしい!
一番のお気に入りは、トレビスのサラダ。
・トレビスサラダ 、アンチョビビネグレット
・トレビスとレンズ豆、ウォルナッツのサラダ、セサミドレッシング
・トレビスとしりしり人参サラダ、山椒ビネグレット
しっかりと味を感じられるアンチョビやレンズ豆や人参に、酸味や香りや風味のよいソースがかかっている。苦味ではなく旨味を感じられるトレビスの器にのせて、手で食べる。トレビスのザクッととした歯ざわりがよく、ソースのしっかりとした味わいを感じつつも、さっぱりとしていて、いくらでも食べられるサラダだった。
色々な野菜があるなかで、毎週使ってもらえることは「良い野菜だった」という答えだと思っている。
野菜を育てることの自信にもなる。
デイブは、今ある食材を最高に美味しく料理する。
一通り食べるから感じることができる、食材の組み合わせや、食べ合わせのセンスのよさ。その感性と鮮やかな料理に、ときめきます!
シンプルなようで、きちんと手がかけられている。生で食べるものは、どこかで工夫しているようだ(直前に切ったり、合わせ方かな…)。
かぼちゃや人参など、ファイヤーピットでスモークしてから調理するものもある。タイミングを見計らいながら、ひとつひとつを丁寧に、私たちの気づかないことを気にかけている、そんなちょっとした作業工程を幾つもしているのだと思われる。
そんな感じで、デイブのご飯はほんとうに美味しい!食べることはよろこび、ということを感じさせてくれる。幸せなご飯の時間も作ってくれている、と感じるのだ。
料理から人柄が伝わる。
美味しいご飯が、今の喜びや明日の私をつくる。
デイブのご飯を食べながら、そんな話をした。
よい夜だったね、また食べに来ようね、と帰路につくのでありました。
「冬の居酒屋デイブ用に、野菜はあるかな?」
「イエス!」
デイブが使ってくれるだろうな、と思って種まきした野菜がある。あの野菜使いたいと言っていたな、どんな風に料理するのかな、なんて、相手あっての物作りって、継続的な関係性も作っているんだよね。
美味しいご飯をみんなでわいわい食べましょう!
料理人に敬意と感謝
八百屋係 / 農園係 大東千恵