食農教育をそだてる勉強会 レポートNo.05
公開インタビュー「なぜNPOに?」前編

食育

こんにちは。フードハブ・プロジェクト 樋口です。

フードハブ・プロジェクト(以下、フードハブ)では、2022年4月の食農教育NPO立ち上げに向けて、全3回の勉強会を開催しました。

今回は、第2回の前夜祭として開催した、甲斐かおりさんによる公開インタビューの様子をお伝えします。全国各地を取材され、地域づくりや農業、食をテーマにした記事を執筆されている甲斐さんに、フードハブからスピンアウトするNPO設立に向けた経緯や思いをインタビューしていただきました。主なインタビュイーはわたし樋口と、フードハブ・プロジェクト支配人の真鍋、後編には神山つなぐ公社の森山円香さんが登場します。

本題に入る前に、神山に滞在しながら感じていることを聞かせていただきました。

甲斐)神山は、サテライトオフィスがあってキラキラしたイメージがあったんですけど、想像以上にこじんまりした、石積みの残る里山で。日本の他の地域にある里山と何も変わらないし、そういう中に新しい営みがあることが新鮮でした。想像していたけれど、一人ひとりの方たちの熱量、本気度が高いなぁと感じています。

第1回目の勉強会にご参加いただいた感想もお聞きしました。

甲斐)農業、市民自治、郷土料理など、多岐に渡る分野を取材しながら「昔の日本から未来を考えるときに、何が変わった方が良くて、何は変わらない方が良かったのか」というテーマをもっています。「昔はよかった」という話になりがちだけれど、その解像度を上げることが一つのヒントになるんじゃないかと思っていて。「食」は暮らしの真ん中にあったもので、田んぼをみんなでやっていくという自治にも繋がるし、文化もお祭りもそう。それが崩れることで、食を中心に語られることがなくなってきた。
大元先生が話された〝フードスタディーズ〟は「食」をつながる形で見ようという発想。私自身も「言葉を得た」というのがあります。それを神山のこのNPOの勉強会でやっているというのはすごく先進的だなと思いました。


フードハブって、なに?

甲斐)まず、フードハブについて説明してもらって、その後、食育の部分を掘り下げて聞いていきたいと思います。

樋口)フードハブは2016年に立ち上がった会社です。農業の担い手育成を目的に、社会的農業、食堂やパン屋・食品店を経営しながら、加工場を運用し、子どもたちと一緒に地域の人たちと一緒に作っていく食農教育にも取り組んできました。立ち上がって6年目を迎えていて、これから食農教育部門が独立します。

甲斐)図として美しい。どの地域でも成立するならみんなやってると思うんですが、難しいですよね。フードハブって、神山町の創世戦略の第1期で生まれた、目玉のプロジェクトでもあるわけですよね。町のいろんなものもしょってるだろうし…昨日、熱い話や苦労された話が伺えて、すごく腑に落ちました。

▶︎ “地域で育てて地域で食べる”、小さな循環をつくって経済もまわす。農と食、町ぐるみの社会実験

食農教育から生まれるもの

甲斐)「食農教育」は、実際にはどんなことをされてきたのでしょうか。

樋口)すごく簡単に言うと、「育てる、つくる、食べる、つなぐ」というひと続きの流れを子どもたちの体験活動としてやってきました。対象としては保育所から高校生まで。高校生に関わる機会が一番多くて、次に小学校。町内には小学校が2校あるんですけど、そのうちの1校から徐々に広がる形でこの5年間進んできました。

甲斐)振り返って今の時点でやってきたことをどう思っていますか。

樋口)フードハブでやらせてもらえたのがよかった、まずはそれが一番です。周りのバックアップや協力なくして絶対できないものごとなので。第1期のつなプロ(神山町の地方創生戦略)の中に保小中高校の連携が位置づけられていて、神山つなぐ公社の森山さんをはじめとする教育チームを中心に、先生方との連携を可能にする試みとして「みんなでごはん」という町内の先生たちが出会う場や、新しいプロジェクトを見聞きする「スタディツアー」があって。部門は1人でしたが、町の動きやフードハブの活動が上手くかみ合って、積み重ねてこられました。

甲斐)子どもたちを一番身近で見られていて感じること、何か具体的なエピソードありますか。

樋口)今日の午前中、稲刈りだったんですよ、5年生の。稲のひと束で茶碗にするとどれぐらいの量になるのか、今日収穫できた量は給食だと何日分になるのか、どれぐらい乾燥させたらいいのか、すごく細かいことまで質問がたくさん出てくるのはおもしろいですね。

甲斐)関心というかリテラシーが上がってるんですね。イン神山の記事に「風景が違って見えるようになってきた」っていう話がありました。

樋口)中学生の言葉です。以前は田植えの風景を見ても「やってるなー」ぐらいにしか思えなかったけれど、田植えや稲刈りを経験して「端っこにあったものが真ん中に見えるようになった」と言っていて。意識できる範囲が広がってきたということ。その言葉を聞いたとき、食農教育は続けていけるな、と思いました。
▶︎ 「風景の見え方が本当に変わっていた、3人の中学生の話」

甲斐)いい話ですね。私も主人が南阿蘇でお米を作り始めてから、田んぼを見るときの目線が少し変わった気がします。それが子どもたちに起こると、その風景を守っているのが誰なのか、これだけきれいに棚田が見えるのは一体誰の仕事なんだろうというところまで発想が及んでいくと思うんですよね。地域郷土愛を育てるために何とかしようとする活動はあるけど、実は、食の活動はものすごく自然にそれが生まれる一つの方法なんじゃないかな。


 

「地産地食(地域で育て、地域で食べる)」の見識を広めるために、子どもから大人までを対象にした食育を。立ち上げ当初はそのような目的で始まった食育でしたが、「先生方のやってみたいこと」に寄り添うかたちで進めてきたことが、結果として継続できる取り組みになったようにも思います。後半では、これまでの葛藤を含めて「なぜNPOにするのか?」について話します。

後編へつづく…


甲斐かおりさんによる 神山校3年生に向けた特別授業の様子もご覧ください。
▶︎「神山校特別授業 フリースタイルライティング」

この日誌を書いた人

樋口明日香

食育係
樋口明日香 (ひぐち あすか)

食育係/白崎茶会認定パン先生。徳島市出身。 神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年に地元徳島に戻り、フードハブに出会う。保育園から高校までの子どもたちの食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる地産地食」を模索中。一番好きな食べものは、みそ汁。

その他の活動

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