食農教育をそだてる勉強会 レポートNo.00
「あたらしく〝食農教育のNPO〟を立ち上げます!」

食育

こんにちは。フードハブ・プロジェクト食育係の樋口です。

フードハブ・プロジェクト(以下、フードハブ)では、2022年4月の食農教育NPO立ち上げに向けて、全3回の勉強会を開催します。目的は、NPOの立ち上げについてみなさんに知ってもらうことと、参加者のみなさんからも期待や課題感を聞かせてもらうこと。そして、NPOが目指すこれからの「食農教育」について一緒に学び、考えていく場を持つことです。
本レポートでは、その様子をお伝えしていきます。

9月1日に開催したキックオフでは、これまで5年間取り組んできた食農教育や、NPOを立ち上げるにあたり考えていることをお伝えしました。特別ゲストに高橋博義さん(神山町教育委員会教育長)、後藤正和さん(神山町長)にもお越しいただき、「まちの食農教育」への期待を語ってもらいました。

全編は こちら からご覧いただけます。

冒頭に、食農教育NPO設立準備委員会の一人である森山さん(神山つなぐ公社)から、フードハブが設立された背景、食農NPOが立ち上がることになった経緯、勉強会の目的について説明がありました。

フードハブは2015年、神山町創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」(以下、つなプロ)の策定過程で、「食べる」をトピックに話し合う中から誕生しています。

現在共同代表を務める真鍋と白桃はその場で出会い、2016年4月にフードハブを立ち上げました。農業の担い手育成、農業を次世代につなぐことを目的とし、食堂やパン屋の運営、加工品の開発、そして食農教育を進めてきました。

「フードハブの食育」から「まちの食農教育」へ

森山)2020年度に、つなプロの5年間を振りかえり今後の施策を検討していました。その最中、樋口さんから「フードハブの食育部門をNPOにしたい」と相談を受けます。町役場側も、地域のなかで積み重ねてきた食農教育を引き続き継続してもらいたい、広がっていってほしいと考え、第2期の「つなプロ」の施策の一つとして位置付けることになりました。
今年度を設立準備期間として進め、来年4月には、正式に食農教育NPOを設立予定です。
設立準備委員の考えだけでNPO設立を進めるのではなく、子ども、先生方、保護者の方々、関係する方々の声を聞きながら、課題感や期待も含めて「まちの食農教育」を一緒に育てていく場にしたいという思いで、「食農教育を育てる勉強会」を開くことにしました。ご参加いただいた感想や食農教育への期待をぜひお聞かせください。

「つくる」「育てる」からはじめる食農教育

続いて、フードハブの食育部門がこの5年間どのような取り組みを重ねてきたかを、農業長の白桃と私からお伝えました。

樋口)まず、なぜ「食育」でなく「食農教育」か、ということについてお話します。
「食べる」は日常的に意識しやすいことだけれど、「つくる」や「育てる」ことになると、距離を感じる人が多いのではないでしょうか。「育てる」体験を日常化していきたいと思い、NPOの合言葉を〝すべての子どもに農体験を〟としました。体験によって、農業について意識するようになったり、物事の成り立ちがわかるようになったり、どんな人が関わっているのかということが想像できるようになると思います。

本レポートでは、小学校1年生、5年生、高校(神山校)の取り組みを紹介します。
保育所、小学校、中学校、高校の取り組みを写真で振り返った全容は当日の動画 ▶︎ こちら をご覧ください

小学校1年生「農家さんになる体験」

白桃)自分たちで種をまいて育て、料理人から発注を受ける。収穫し納品した野菜を料理人が調理する。できあがった料理を実際に子どもたちも食べるし、かま屋に来ているお客さんも食べる。まさに農家が日々やっていることを子どもたちと一緒にやってみた取り組みです。

樋口)この活動は、1年生の先生と相談している時にふと出てきたアイディアがかたちになったもので、大人もワクワクするよね、と言いながら続けて実施しています。

学校は先生方の異動があり、顔ぶれも毎年変わります。「今年はこんなことがしてみたい」「昨年のあの活動のここは変えてみたい」など、その年の子どもの様子や状況により内容も変わってきました。この5年間一緒に取り組んできた神領小学校の武市由美先生に、お話を伺いました。

  • 外部から関わってもらうことで「やりたいな」と思っていたことが実現し、活動の広がりがでてきた。
  • 農業者(白桃)の専門的なアドバイスや、学校と農業者をつなぐコーディネーター(樋口)の存在があり、活動内容の具体的な相談ができた。
  • 生活科の時間ではあるが、食育、ふるさと教育、キャリア教育にもつながる活動になっていて、子どもたちの将来像や選択肢が広がっている。

良さがある反面、継続していくためには打ち合わせ時間や活動時間の確保、異動がある教員間の引き継ぎ等、課題も見えてきました。
先生が「やってよかった」と思える取り組みに、わたしたちが何をどのようにサポートできるのか。今後も先生の声を聞きながら考えていきたいと思います。

広野小学校・神領小学校5年生:「もち米づくり」

白桃)私の家で75年以上受け継いできたもち米の種籾を、学校で子どもから子どもへ受け継いでいます。今、「種=買うもの」になってきてるんですけど、地域の種を子どもたちにも継いでほしいなと思っています。

樋口)手で植えるのと機械で植えるのと両方を体験するようにしていますよね。手植えと機械植えの両方をやる意図は?

白桃)昔は手で植えて、手で刈ってきたものですけど、今の農家さんは、機械で植えて、機械で刈っている。昔のお米作りと、今の農家さんの米作り。両方のやり方を体験した方が子どもたちにとっていろんな体験になってくるんじゃないかなと。

樋口)最初に手植えしてあとで機械になるので、子どもたちは、「えーーー今までのがあんな一瞬で!」っていう。

白桃)結構ね、100倍速ですよね。

樋口)そうそうそう。教科書に載ってることを、その場で体感できる。子どもたちの声を聞くのがすごく面白いなと思っている時間です。

城西高校神山校の「まめのくぼプロジェクト」

樋口)高校から徒歩10分程度の場所にある、「まめのくぼ」という長年休耕地だった場所を2019年からお借りしています。食農プロデュースコース、環境デザインコースの両方がこのフィールドで学んでいて、食農のコースでは神山小麦の栽培に取り組んでいます。

白桃)小麦は私の家で代々継いできたものです。元々は味噌と醤油を作るための小麦でしたが、フードハブの農園でパン用に栽培し始めたんです。一部を高校にお渡しして、「まめのくぼ」でも育てるようになりました。

樋口)高校生が栽培していて良かったなと思う瞬間があったそうで。

白桃)小麦が収穫できない年があって、その時は、高校が育ててくれた分を分けてもらい、種をつなぐことができました。大大ピンチでしたね。地域で種を守るってこういうことなのかなって思います。

5年間の取り組みを振り返ったあと、高橋教育長に感想を聞きました。

高橋)教育委員会として本当にありがたく思っています。学校で進めている食育と、食農教育が両輪となって、今後学校現場で進めていただいたら非常に効果的なんだろうなと思っています。体験的な活動を小さいときにしっかりやっていただいたら、子どもたちにとっては非常に良い経験になるのではないかと思っています。

最後に、神山町役場 産業観光課の松本さんとフードハブ支配人の真鍋と私で、NPOの現在地についてお話しました。設立準備委員の一人でもある松本さんは、農業担当の立場からNPOへの期待を聞かせてくれました。

松本)特に神山町のような中山間地で景観や生活環境を守るには、農業が非常に重要な役割を占めています。その農業を守り続けていくという意味では、7割から8割を占める兼業農家が重要になってきます。家が農業を続けるかどうかは、その家自体が農業をどう捉えているかにかかっていると、私は考えています。

松本)2年ほど前に、町の視察でオーストリアに行かせてもらいました。荒れた土地が見当たらず不思議だなと思って現地の人に聞いてみたんですけども、多く返ってきた言葉が「アイデンティティ」という言葉でした。つまり、農業は日常。当然のようにやっているんです。オーストリアは兼業農家の割合が7割から8割。神山と一緒ですね。

神山町の農業関係でアンケートを取ると、「子どもには継がせたくない」「耕作放棄やむなし」と諦めのような意見が多く書かれます。今回このNPOが設立されることで、小さい頃から農業や食に触れたり考えたりして、子どもから変わってくれたらいいなと思います。子どもが変わることで、大人が変わってくるといい。良い循環が生まれていけば、農業を家族ぐるみで続けられる。それができたら理想かなと思います。

食農NPOが今考えていること

NPOとして、まずは5つの事業を考えています。ここまで取り組んできた「まちの食農教育」では、より日常化して継続できるような仕組みをつくることに注力します。新たな取り組みとして、食農教育と連動した「体験・参加型の学校給食」、多様な世代の分野の人たちが通うスクール事業として「食農教育コーディネーター養成」、社会や会社に必要な食農教育を企業と一緒に開発していく「SDGs企業&行政連携」を考えています。最後に、「フードスタディーズ研究開発」。このフードスタディーズは第1回勉強会の内容でもあります。

真鍋)食育をはじめとする教育的物事は抽象的になりがちで、効果がなかなか見えづらい部分があります。NPOという社会的役割を担う組織形態をとることで、事業を通して社会問題を解決していくことができるのではないかと思っています。

フードハブ・プロジェクト農業指導長の白桃茂はこのようにいいます。

「気候が変わってきて、農業は昔の暦に合わせたやり方だけでは対応できんようになってきた。答えがないことをやっていく時代、対処の仕方や応用力を勉強するといい。」

「すべての子どもに農体験を」という言葉には、答えのない時代を自分たちの手で生き抜く力を養ってもらいたいという願いがあります。学校の勉強も大事ですが、同時に教科書で学んだことを畑で体験して、感性や応用力を養っていくことが重要だと考えています。

最後に、後藤町長よりエールをいただきました。

後藤)農産物が体を作ります。どういった作物がどのように体に作用しているか、一人ひとりがしっかりと考えたり、食べたりできるようになって欲しいと思います。自然のサイクルを食農教育で体験することで、一人でも二人でも農業をやってみたいという人が出てくれば、それはありがたいですね。
土を耕す時に水が出てきたり、2月の初旬には越冬していたカエルが掘り出されたりもします。ヘビはオタマジャクシやカエルを食べて生きている。生命をいただいて生かされているという自然の摂理、循環の仕組みがある。その頂点にいるのが人間です。
昔はお天気を見ながら農作業をやってたわけですよね。だから大気の循環、天候の変化にも気づく。人として生きていく時に何が一番大事かというと、自然への感謝、人に感謝、優しさ。これなくして地域コミュニティはうまくまわっていきません。教えるのではなく、自分たちがいろんなモノに生かされていることを気づいて欲しいというのが、私の一番の願いです。

神山町の地方創生戦略(つなプロ)では〝実行する人がいる〟状況を丁寧につくってきたという話がありました。食農教育は、先生の「やってみたい」「おもしろそう」というワクワクを起点に、「教科書のない」取り組みを重ねてきました。実行したい人がいるからこそ続いてきた活動でもあり、役場、神山つなぐ公社、学校、それぞれの立場から応援していただいたことで継続可能な活動になってきました。
組織の形態は変わりますが、人とともにつくっていくことにかわりはありません。より良い「食農教育」を考える場をつくりながら、その価値を広く社会に問うていきたいです。

お知らせとご案内

NPOの立ち上げメンバーを募集しています。心当たりの方に案内を届けていただけるとうれしいです。
▶︎ 食農NPO求人募集記事

「神山の食農教育をそだてる勉強会」
▶︎ 全3回の案内 (第2回以降のお申し込みはwebページに更新していきます)

9月1日:キックオフ(本記事)
9月6日:第1回「〝フードスタディーズ〟ってなに? 神山の農と食をめぐって」
10月29日:第2回「農と食をつなぐ〝参加型給食〟」
11月27日:第3回「子どもの好奇心と探究心をはぐくむ 食農メディア」

この日誌を書いた人

樋口明日香

食育係
樋口明日香 (ひぐち あすか)

食育係/白崎茶会認定パン先生。徳島市出身。 神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年に地元徳島に戻り、フードハブに出会う。保育園から高校までの子どもたちの食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる地産地食」を模索中。一番好きな食べものは、みそ汁。

その他の活動

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