「あたりまえ」のなかにある「宝物」を見つけた5年間

かま屋通信

フードハブの「ハブ(HUB)」は「結節点」を意味する言葉。神山の食をつくる「小さいものと、小さいものをつなぐ」場でありたいという願いをこめています。設立5年目、農業指導長の白桃茂が実感していることを聞きました。(聞き手・種本寛子、文・杉本恭子)

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2016年3月1日、フードハブのオープニング式典で「5年後に今していることをしても遅すぎる。今しかない」と話しました。農業をするなかで、担い手のない田畑が荒れてしまい、受け継がれてきた種が絶えてしまうことにずっと心を痛めていましたから。

この5年間で、フードハブは農業の会社ですが「農業だけ」の会社ではないことが大きな魅力なんだと実感しました。農業をやる人が、料理人、パン職人がいて、加工品の製造をする人と一緒に働いている。僕らは、自分がつくったものがどんな風に料理され、どんな加工品になるのか、そしてお客さんがそれを食べるところまで見届けられます。また、その過程にいろんなヒントがあるんですね。たとえば、僕はいろいろな果樹をつくってきたけれど「加工するには果汁を絞る手間が少ないものがいい」と言われるまで、そういう見方をしたことはなかったです。また、シェフが畑で間引きの野菜を見つけて、手間をかけて天ぷらやサラダにしてくれると「こんな使い方もできるなんて魔法使いみたいやな」と思います。

5年前、「地域や家庭のなかでなにげなく伝えてきたことが宝物と気づかせてくれ、つないでくれるのがフードハブだ」と言いましたが、当たり前すぎるくらい自然にお互いにヒントを与え合うすごい会話が日々発生しているのが今です。いろんな立場の者が一緒にいるから、視野が広がるし前にも進んでいける。フードハブ の魅力はそこにあるんじゃないかと思っています。

食育のことも、5年経って学校との関わりも深まってきていると思いますね。4年ほど前、地元の西野さんの協力で畑をお借りして、神領小学校の入り口に15種類ほどの果樹を植えたのですが、そろそろ実がなりはじめていて。ここは、子どもたちが葉や実の色や大きさを見たり、匂いを嗅いだり触ったりしながら「酸っぱいからまだ早かったな」「この時期にとれば熟しとるな」と自然に五感を使って楽しめる場所になったらいいなと思っています。人は言葉で伝えてくれるけれど、野菜や果樹は何も言ってくれないから、「いかに観察するか」が一番大事なことで。そういうことを小学校のうちから自然に学べて、子どもたちが将来を選択するとき選択肢を増やせるような場にもなれたらええんかなと思い楽しんでいます。

僕自身も、親の手伝いで初めて裸足で田んぼに入ったときの感触を忘れなかったから、農業に関わったんやと思います。五感のすべてを通してでないと伝わらないことが必ずあるというか。今は、いろんなものごとが分業化されてしまって、五感による伝え方が足りなくなっているみたいで、五感でしかつなげられないものを見出していく場所がいるんかなと思う。こういういろんな役割をできる、フードハブになっていけたらいいんかなと思っています。

この日誌を書いた人

いただきます編集部


いただきます編集部 (一番、食いしん坊です。)

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