「まずは水やりから」
失敗から考え、理解し、実践する日々

つなぐ農園

つなぐ農園 ハウス担当の朽木です。

昼に、ハウス建設のために中古の鉄パイプを軽トラに積み、鬼籠野から神領へと国道を走っていました。車窓では、桜が強風で横殴りに散り、鯉のぼりは空をいくぶんもったりと泳ぎ、季節がぎゅっと混じった景色。今だけ、もしかすると神山だけの光景を、軽トラの窓を全開にあけ、柔らかい風を浴びながらぼんやりと眺めていました。神山の田に水が張られ青々とするのは、これを読んでいただく時分でしょうか。楽しみです。

「双葉が出揃ったら、水をしばらく切り気味にする」。水やりにあたり、こんなアドバイスをもらいました。なるほど、いいこと聞いたな、この通りにやろうと。でも実際に水やりをすると、「しばらく」ってどのくらい?「切り気味」って?知識が全くの付け焼刃だったことが分かりました。今はこう考えます。「しばらく」=本葉3、4枚出るまで。「切り気味」=その日の夕方にハウスの大部分で土の表面が乾く状態。そう考えていても、季節・天候・野菜の種類が違うと、正解がすっと変わります。なんと難しい、なんて面白い。

ハウスを担当し4カ月程が経ちましたが、水やりでの失敗に事欠きません。簡単そうな水やり、実は核の技術です。その失敗談を少しだけ。

冬のまだ寒い時期、収穫適期を迎えた水菜を予定よりも長期間で収穫する必要があり、本来は水を切ってしまうタイミングで水をやりました。結果は根元が腐り、収量減。今冷静に考えると、収穫期間を延長するという変則的な対応と本来の水やりは区別しなければいけません。当時はもう、水をやったら野菜を腐らせてしまったという、気持ちの上でのインパクトがでかくて、それを機に水量は無意識に少な目へ変わりました。すると今度は、別の弊害を生みました。土中の水分量が少なく、その少ない水分に肥料が溶けるものだから、肥料分が濃くなる。その濃い水を吸った野菜達にアブラムシが発生。苦い記憶です。ももさん(農業長 白桃)は「初心者の水やりは、最初は多過ぎて、次は少な過ぎて、それを繰り返して、だんだんちょうどいいところへ収束する」と言います。その言葉通り、順調に失敗を重ねつつ自分の感覚を修正する日々です。失敗しては原因を考え理解し実践し、そしてまた。

一度失敗したハウスは基本的には元に戻らず、失敗から長くて数ヶ月ほど…毎日それと対峙するのは、なかなかヘビーです。ちゃんと育てられなかった野菜達を見る度に、くやしくて、早く水やりを上手くなろうと心から願い実践する日々を過ごしています。

そんな中、新たな挑戦が。ハウス野菜の種類を増やすことになりました。今までは水やりの上で似通った品種を育てていましたが、適切な水やりの条件が異なる野菜達を同じハウスで育てます。ゆっくり成長するベビーケール、早く成長するラディッシュ、少しでも水が多いと棚持ちが悪くなるルッコラ。毎日の徹底した観察を積み重ね、水やりを上手に、一歩ずつ。そしてその先に、日照不足の梅雨と高温の真夏へ向かいます。

以前の奮闘記で、「まずは水やりから」なんて書きました。そんなに簡単ではない、自分馬鹿だなーとこの数か月間で身に染みています(笑)。きっと終わりのない挑戦となる野菜作りに、例えば、水やりでの失敗を重ねて上手くなるように、向き合っています。自分に野菜作りのセンスがあるか分かりませんが、それが自分で分かるときに後悔しないように。明日も明後日も、神山の水田が青くなる季節も、水やりの日々です。その意味では、「まずは水やりから」、間違ってはいないようです。

この日誌を書いた人


nakaniwa@foodhub.co.jp ()

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