揺るがない収益の柱を立て、
多品目の農産物を育てる状況をつくっていきたい

つなぐ農園

つなぐ農園が農業を始めてもう少しで4年となります。

当初つなぐ農園では、年間250品目を超える少量多品目栽培をやってきました。多品目栽培をすることによって、かま屋やかまパンで使う素材を豊かにする目的です。しかしながら、この状況には、1つだけ大きな問題がありました。それは、経済的に持続可能ではないということです。私が考える農業は、経済活動の1つで、生業として生活を成り立たせていくための仕事。しかしながら、250品目を超える農作物を作ることは、250の野菜の特徴・栽培方法を把握し、数多くの作業をこなしていかなければいけません。これはベテランの専業農家さんでも実はなかなか難しいことだったのです。にもかかわらず、最初から多品目で栽培することを始めてしまった。上手くできない、売れない、収量が少なく使えない…そんなことが多発。完全に私の判断ミスでした。今だからこそ考えられるようになったのですが、有機栽培をする新規就農者に一番多い失敗事例を体を張ってやってみたということだな…と。

そんな事も踏まえて、私が4年間を通して会った多品目栽培且つしっかりと稼いでいる専業農家を分析すると、大きく分けて2タイプあるということがわかってきました。

1つは、マーケティングを意識して、超付加価値をつけて農作物を販売できている農家さん。このタイプは、どうすれば、どんな物を、誰が、欲しがっているかを徹底的に調べ、その情報をもとに少量多品目で栽培していく。そして、市場価格の2〜10倍の価格で農作物を販売をする。ポイントは、むやみやたらに多品目にするのではなく、計画、栽培、営業、販売までの全てを把握し、コントロールされた少量多品目での栽培であること。また、前提条件として非常に高い生産技術と多岐にわたる作業工程をマネージメント力があること。

2つ目は、しっかりとした収益の柱があり、その上で無理なく程よい規模感で少量多品目栽培をやっている農家さん。収益の柱としての農作物を、市場規模の大きな1〜5品目ほどに絞り、製造業のノウハウも取り入れながら、効率的且つ計画的に生産を行っている。そして、そこで生み出した収益をベースに、許された時間内で少量多品目栽培を行っている。ポイントは、収益の柱の作物に対する極めて高い専門性があり、生産計画通りに進める能力があること。その上で、多品目はあくまでも副業的立ち位置であること。

つなぐ農園は、ご存知のように、農業を生業として専業農家になる新規就農希望者を受け入れています。希望する人の多くは、有機栽培且つ少量多品目で農業をやっていきたい人です。ただ、我々が失敗したように、生産技術もマーケティング力も乏しい状態から、多品目栽培をするのはかなりのリスクです。遠回り思えるかもしれませんが、確固たる収益の柱を立ててから、副業的な立ち位置で自由に売上などに縛られることなく、多品目の農作物を育てられる状況を一緒に作っていきたい。自分達も含め、やるべき事(生業として収益を上げる)と、やりたい事(少量多品目で栽培したい)を、きちんと整理して、それに向かって一歩一歩歩んでいくことができればいいなぁと思います。

今すぐにはできませんが、皆さんもう少しお待ちください!!

この日誌を書いた人

白桃 薫

フードハブ農業長/神山つなぐ公社 のうぎょう担当
白桃 薫 (しらもも かおる)

農業長。神山町出身。一般社団法人 神山つなぐ公社所属。神山町役場の職員として11年間勤務。暮らしや仕事中で、日々神山の農業に対して危機感を抱いていた。神山町の地方創生ワーキンググループで考えたフードハブの原案に「これしかない」と思い実行を決意。現在は、神山つなぐ公社の、のうぎょう担当として立ち上げに参画し、実際に田畑に出て農業に取り組んでいます。

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