かま屋での日々の積み重ねがつくる「おいしさ」

食べる

こんにちは!かま屋の料理人、加地です。私事ながら2019年いっぱいでかま屋を離れることになりました。

いつも来てくださる皆さま、メンバー、そして神山の人たちに感謝を込めて、かま屋での日々、自身の変化、神山という土地で私が得たものを感情のままに書かせていただけたらと思います。読んでいただけると嬉しいです!

私のかま屋での1年8ヶ月。振り返ると、常に「自分との戦い」でした。私がかま屋に来た理由は、自分自身の強化のため。ですが勢い良く来たものの、気付かされるのは自分の甘さや弱さ、苦手意識から来る壁の高さ、挑戦することへの恐れ。。など、とてもネガティブな現実との直面でした。でも、これが良かった!まずそんな所でくじけている自分に気づきました。そして自分に足りないものを認識し、次はそれを一つずつクリアしていくことだ、と。

今のかま屋のスタイルは「おかず5種類が日替わり」で、味つけもバラエティ豊かなものばかり。その土台を作ってくれた食の番頭・細井さん。引き継ぎをした当初はそんなことが出来るのか…と途方に暮れながらも、やるしかない。毎日、厨房に立って料理をし、日々訪れるランチの試食の時間。ドキドキしながら細井さんへと持っていくと、厳しい意見が次々と…。限られた時間で味を直しお客様へと出される。この一連の流れがお店の味を決めるので、とても大事な時間なのですが、当初の私は自信がなく、正直言われている事の意味を理解するまで至っていませんでした。ですが、この厳しさが私を変えてくれました。細井さんは常にお客様目線に立って意見をくれる方。私は、意識がお客様ではなく自分に向いている事に気付かされました。気づいてからは、どうしたら美味しくできるか?明日は必ず美味しいをもらおう!と目線が変わり、少しずつですが自信もつき、メニュー作りにも楽しさを感じる事が出来ました。細井さんとのやりとりは、”料理人”という仕事は、お客様から”おいしい”をもらって初めて成り立つもので、自分の料理に自信をもつことがとても大切だと、改めて強く認識させてくれました。

そもそも、神山の野菜は新鮮でおいしいのだから、おいしくなかったら料理人である自分の力量だ!と情けなくなるシーンも多々ありました。そんな時にいつも救われたのが、フードハブの魅力の一つである、それぞれがプロフェッショナルの集団という事。接客に自信がなければ、同じお店にお客様をよく見ている清家さんや青ちゃんがいる。野菜のことで困ればちえちゃんやつなぐ農園チームに相談ができる。職種は違えど同じ作り手のかまパンチームの笹川さん、山ちゃんは日々最高の”おいしい”を作り続けている。自分の考えを伝えることに困った時には冷静にアドバイスをくれる食育係の樋口さん。そんな皆の意見を聞き、円滑に進むようまとめてくれる広報の種ちゃん。それをどーんと見守るお父さんのような存在の真鍋さん。一人一人に書くとここに収まらなさそうなので…(汗)それぞれのメンバーが自分の仕事に対してまっすぐで揺るがない人達ばかりのフードハブ。本当にすばらしいチームの一員で働ける環境であったことに感謝しています。

オープンキッチンの食堂というかま屋のスタイルは、お客様とのやりとりもオープンです。カウンターに座るお客さんとの会話、見られている事を意識しながらの調理、テーブルで食べている人の表情。どきどきしつつも、私の楽しみであり活力でした。少しずつ増えていく、いつもの常連さんとの顔を合わせたやり取りは、神山という土地で暮らし、日々を重ねていく充足感を私に与えてくれました。改めてそう強く感じたのが、年末の12/28に「かじ屋」と称した、かま屋での最後のありがとうディナー!なんとなんと、50名もの方に来ていただけて、とっても嬉しい時間でした。

そこで作ったものは牛すじ煮や具沢山のおでん、そば米汁など、いつものかま屋の味や作り慣れた味のものばかり。奇をてらったものではなく、来てくれた人に喜んで食べてもらえるようなあたたかい料理。かま屋での日々の積み重ねが、自然と自分の中のおいしいを構築してくれました。毎日食べたいもの、安心しておいしいね〜と人と分かち合えるもの、それが私の目指したい”料理”なのだと気づき、このメニューにしました。集まってくれた皆さんの笑顔や会話の中に、自分の目指す答えが見えた気がして、また一つ救われたような、忘れがたい一日となりました。

答えは他にはなく、いつでも自分の中にある。この根本を気づかせてくれた神山での日々は私にとって大きな財産です。今後は自分の夢でもある、故郷の和歌山で”自分のお店を持つ”という大きな目標に向けて進みます!また皆さまに料理を通して喜んでもらえるよう、精進していきます。

かま屋で学んだ経験を忘れずに、これからも自分と向き合い、時には壁にあたり、迷いながらも歩み続けていきたいと思います。

この日誌を書いた人


nakaniwa@foodhub.co.jp ()

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