「やってみたい」からやってみた、その結果。
米山分けプロジェクト<後編>

食育

タイミングよく稲刈りに参加できた「米プロ」メンバーと。
タイミングよく稲刈りに参加できた「米プロ」メンバーと。

今回は「やりたい!」と手を挙げたフードハブの有志のメンバーで進めている「米山分けプロジェクト(2019年7月号に掲載)」の後編をお伝えします。→ 前編「やってみたい!」から始める、米山分けプロジェクト

田植えからの経過(山あり谷あり)

田植え(手植え)したのが6月10日

おろの地区にある田んぼはかま屋から車で10分少々。当初は交代で見に行けるかなーというイメージを抱いていた米づくりですが、実際は朝早くから夜遅くまで店で働いているメンバーにとっては物理的にも「遠い」存在になってしまいました。10人いるメンバーのうち10数回ほど見に行けたメンバーが最多で、ほかのメンバーはほとんど稲の様子を見に行くことさえできていません。それでも、稲は育つし収穫の時を迎えます。農業チームの見守りに感謝。

7月10日 田んぼの奥に見えるトトロが癒し。

やってみると、わからないことだらけ。水が循環していないという問題にはどう対処すればいいのか。植田さんが見に来てくれたり、農業チームと考えたり、お米づくりを通して新しい知識が一つ、またひとつと増えていきました。

7月26日

8月7日

稲が育ってきてからの一番の心配は鹿やイノシシ問題。せっかく実った米を食べられないように農業チームのメンバーに電気柵を張ってもらい対策しました。

8月26日:左側に見えているのが電気柵(ソーラー対応)

収穫を間近に控えた9月10日に第2回のミーティング(参加者3名)を開き、米の配分方法が決まりました。

  • 経費は全員で均等に負担する
  • 田植えから収穫までの参画時間によって米の配分(山分け分)を決める
  • 米の配分量は、米づくりへの参画1時間あたり2kgとする
  • 参画時間分の米の総量を除いた米は、全員+農業チームで均等に分ける(後から農業チームには2kgずつ配分となりました)

そして、いもち病の発生。

9月21日

少し色が変わっている部分が「いもち病」にかかってしまった稲。

10月4日

いもち病が広がってしまい 、予防のためにボトキラー水和剤という微生物農薬(バチルス菌。納豆菌もバチルスの仲間)を1度まきました。やはり病気の勢いはおさえられず、このままでは収穫量は見込んでいた200kgより大きく下回りそう…という状況で稲刈りの日を迎えました。

8月にボカシ肥料をつくったものの入れるタイミングがなかったり(不要だった)、結局草取りは一度もやらずに済んだり、当初の想定とは異なることもいくつか起こりました。無事に稲刈りまで辿り着くことが当たり前ではないことをひしひしと感じながら過ごした日々。

稲刈り

10月7日。メンバーらがなるべく参加できる日(店舗定休日は月・火)、かつ天気の良い日を選んで稲刈りを決行しました!大々的にイベントやりたかった…けれど、まったく余裕がありませんでした。南の海上で台風が発生しており数日後には雨が予想されましたが、数日間だけでも「はでかけ」をして乾燥させることにしました。

はでかけした稲

農業チームに機械の操作法から教わりました。

東京から神山町に来たばかりの弓削(ゆげ/ストア店長)も参加

4日後、台風が来る前に早めに取り入れ、脱穀。

山分け分は…?

さて、山分けできるのか。

  • 経費は全員で均等に負担する
  • 田植えから収穫までの参画時間によって米の配分(山分け分)を決める
  • 米の配分量は、米づくりへの参画1時間あたり2kgとする
  • 参画時間分の米の総量を除いた米は、全員+農業チームで均等に分ける(後から農業チームには2kgずつ配分となりました)

決めたルールにのっとって「山分け分」を決めました。全員分の米づくり参画時間を米に換算すると92.2kg。

収穫したお米が全部で138kgだったので、
138kg-92.2kg=45.8kg
45.8kgがメンバーで山分けできる米の量。農業チームのメンバー4名、サポーター2名の計6名にはそれぞれ2kgずつお渡しすることにしました(2kg×6=12kg)。
45.8(山分け分の米)-12=33.8kg
この33.8kgをプロジェクトメンバーの10人で等分し、1人3kgずつ山分けすることにしました。その結果が下の表の通り。

収穫後の最終結果

個人の経費負担額は ¥3,100 でした。山分け量は、最小のメンバーが3kg。最大のメンバーが26kg 。これをどう捉えるか。

「米山分けプロジェクト」は一つの実験的な試みでした。例えば「米づくり」未経験の人たちが「米づくりやってみたいー!」と思った時に、どの程度米づくりに関わることができて、どの程度のフォローが必要なのか(栽培、管理など)。どのくらいの費用負担が必要か。一体この田んぼからどのくらいのお米が収穫できるのか。まずは「米づくり」素人のフードハブメンバーがやってみるとどうなるんだろ!?「やってみたいひとー!」で、手を挙げたメンバーでやってみた結果です。

普段東京にいるメンバーも2名参画していました。「メールに返信することしかできなくて…」「なかなか行けない(参加できない)んだけど、どうしたらいいんだろう」「お金多めに払うよ」などという声も聞こえてきました。「参加できている」という実感が得づらい場合の策として「LIVE中継する」という案も出てきましたが、東京メンバーだけでなく、神山にいるメンバーも予定が合わせづらいメンバーです。仕事以外の、いわば優先順位低めのものごとをどうやって進めていくのか、あれやこれやと話しながらも、巻き込み力弱め、参画力低めのプロジェクトになってしまいました。

「栽培」という視点でみると、たくさんの「ハテナ」に直面したものの「知っている人に聞ける」ということがとてもありがたい環境だと再確認できました。それに、「手元に米がある!」ってことの心強さったら!!!「米を作れる」って、強いです。いや本当に。

いつも食べているお米を、これまで以上にうんと近い距離でいただくことができます。

収穫した「日本晴」のお味は、のちほど追記することにしますー。一旦、おしまい!

この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

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