ちえちゃんの あんな野菜、こんな野菜
「モロヘイヤ」(2019年9月号)

ちえちゃんのあんな野菜、こんな野菜つなぐ農園育てる

絵:大東千恵
絵:大東千恵

原産地は中近東。砂漠でも生育する生命力の強い野菜です。古代エジプトの王様がどんな薬を飲んでも治らなかった病が、モロヘイヤのスープを飲んで治ったことから「王様の野菜」とも呼ばれています。

そんなモロヘイヤはとても栄養価が高く、特にBカロテンやビタミンEは野菜の中でもトップクラス。抗酸化作用により風邪やガンの予防、細胞の老化を防いでくれます。カルシウムに鉄分、食物繊維も豊富です。5000年も前から栽培されていおり、クレオパトラも好んで食べたそうですよ。

気温が25℃を超える5月頃に種をまき、7〜10月頃まで収穫できます。草丈が30㎝を超えると、摘心しましょう。新芽をカットすると脇芽が伸びて、葉の枚数が増えてゆきます。芽先から15㎝程の柔らかな若葉をこまめに摘み取ることで、分枝して収穫量が増加しますよ(夏の葉物野菜、ツルムラサキや空芯菜、バジルなども同様です)非常に暑さに強く、真夏に一番生育旺盛になります。なんと頼もしいこと。家庭菜園でも育てやすいです。ちなみにモロヘイヤのチャームポイントは、葉っぱの下の方にある赤色のひげです(葉の一部だそうです)。

モロヘイヤは、茹でたり葉を刻むことで粘りが出やすくなります。この粘りの成分には胃や消化器の粘膜を保護する働きがあり、残暑や季節の変わり目にも体を守ってくれることでしょう。さっと下ゆでしておひたしに。刻んでネバネバ和え物や、とろとろのスープもやみつきですね。かま屋ではお味噌汁や、そのまま天ぷらにしたりと活躍しました。そしてこの粘り気は、人も植物自身も、夏の厳しい環境から皮膚や粘膜の保護したり刺激を和らげるための、生き物の工夫ではないかと思われます。

そんな優秀なモロヘイヤですが、一方で部分的に強い毒性があります!成熟〜完熟過程の種子とその鞘、種から発芽直後の若葉、収穫時期を逃した茎を食べると、めまいに動悸に吐き気、心不全になることもあるので、家庭菜園では摂取しないように注意が必要です!市販されているような、柔らかな若葉とその柔らかい細い茎は、毒性がなく安心して食べることができます。

モロヘイヤは日照時間が短くなると花芽をつけ始める短日植物のため、9月になると次第に黄色い花をつけ始めます。花を切り落とすと、夏の終わりを惜しむごとくまた脇芽が出てきて葉をつけてくれるので、もう暫くの間楽しめますよ。秋深まると花がどんどん咲き、毒性をもつ鞘がいつの間にかできてしまうので栽培は終了しましょう。モロヘイヤのように毒を持った植物は、生存競争の中で有利であったかもしれません。種が完熟するまでに食べられないようにする防衛策であるのかもしれません。種を守るためのモロヘイヤの親の強い愛を感じるともに、モロヘイヤの生きることへのひたむきさに驚かされるのでありました。

「畑ツアー」にてモロヘイヤを試食中の子どもたち

この日誌を書いた人


nakaniwa@foodhub.co.jp ()

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