育てる、つくる、食べる、学ぶ「地産地食の学校」

地産地食の学校

地産地食の学校⑬ 阿波晩茶の茶擦り
地産地食の学校⑬ 阿波晩茶の茶擦り

こんにちは。食育係の樋口です。今回は8月から始まった「地産地食の学校 一からつくるお弁当シリーズ」についてお伝えします。

「地産地食の学校」

「地産地食の学校」は、フードハブ・プロジェクトが農業や食にまつわるつくり手をお招きし、その方々が学びの「案内人」となる食育学校です。つくり手としての現在の景色をみなさんと共有し、参加者も自らの専門性を携えながらお互いの見識を広げる。みんなで学び合う場にすることで「地産地食」を一緒に推し進めていけたらと2017年からスタートした取り組みです。2018年2月以降はなかなか開催できずにいましたが、満を持して…復活!

これまでは単発開催だった「地産地食の学校」ですが、この夏は「一からつくるお弁当」をテーマに5つのワークショップを開催するお弁当シリーズを企画しました。今回はその企画に至った経緯や個人的な思いを「みんなでつくる」「お弁当」「一から」というキーワードに沿ってお伝えしたいと思います。

「みんなでつくる」こと

3年前の2016年、フードハブ・プロジェクトが立ち上がった時の真鍋(支配人)が書いた記事が「FOOD HUB PROJECT | 地方創生と地産地食 神山で暮らしながらみんなでつくる食文化のハブ」

「ハブ」は「中心、中核」という意味を持っています。神山の土地の農業や食文化を、まずはわたしたちが知って実践していくこと、それを伝えていくこと、続けられる仕組みをつくることが「地産地食ー育てる、つくる、食べる、つなぐー」を合言葉に立ち上がった Food Hub Project の役割じゃないかと考えます。

「地産地食の学校」は「みんなでつくる食文化のハブ」を具現化していく場の一つだと考えています。「食べる」ことの延長線上にあって、少しワクワクするもので、集ったみんなでいっしょに考えられる場。案内人の方々にアイディアをいただきながらいっしょに企画を練る場も、参加者のみなさんと過ごす場も、どちらも「みんなでつくる」時間です。

「お弁当」

2016年から城西高校神山校で「お弁当プロジェクト」に取り組んできたことがわたしの中ではとても大きな経験となっています。「地産地食」をテーマに、生徒たちが育てた野菜を調理し、地域のみなさんに食べていただき、伝えていくという取り組み。ほとんど調理経験のない生徒たちが、家庭科の先生やフードハブ/かま屋料理長の細井のアドバイスを受けながら自分たちで考えたお弁当を100食作って神農祭(かみのうさい/文化祭)で販売するプロジェクトは、そのプロセス自体が学びの宝庫。秋に旬を迎える野菜は?お弁当のメニューってどんなのがいいん?「産食率」ってなに?「原価率」ってどうやって求めるん?…新しく知る知識がそのまま実践に結びつくライブ感と、本番は無事に100食作れるのか?なんていうプレッシャーとの間で生徒たちが様々な感情を出しながらつくっていく様子は、そばで見ている大人もハラハラドキドキ。このお弁当プロジェクトは、食材を育てる、つまり「一から」やってみるプロジェクトでもありました。

「一から」

2017年に神山校の全校生徒といっしょに見たドキュメンタリー映画が「カレーライスを一からつくる」。このドキュメンタリーは、カレーをつくるために米や野菜、肉はもちろんスパイス、塩、器や箸、スプーンに至るまですべて自分たちで作る計画を実行していく学生たちの姿を追っています。これを見た時、もしかすると神山町のつくり手さんとだったら「お弁当を一からつくる」ことだって実現できるんじゃないか、そんな気持ちが湧いてきました。梅の枝(ずばい)でつくるお箸(織田智佳さん)、神山で譲り受けた生地を使ってつくる箸袋とあづま袋(KULUSKA 藤本直紀さん・あやさん)、神山杉の曲げわっぱ弁当箱(近藤奈央さん)、神山の茶葉でつくる阿波晩茶(FHP 中野公未)。つくる素材も「神山産」にこだわっているのが今回の企画です。

いずれは様々な分野の案内人が集ってわちゃわちゃと企画が立ち上がっていくといいなぁと思い描いていますが、まずは「つくる」ことに焦点をあてた8月開催の「一からつくるお弁当」シリーズの3回の様子をお伝えしたいと思います。

地産地食の学校⑫ 箸をつくろう〜梅の剪定枝を使って〜

案内人:織田智佳さん
神山町の阿川地区にお住まいの森さんから譲っていただいた梅の枝(ずばい)を使って箸を作りました。「自分のために」「パートナーのために」「甥のために」、枝を選んで丁寧に削って名前を入れたたった一つの箸、持ち帰った先でさっそく活躍していることと思います。

当日の様子はこちらからご覧ください。

地産地食の学校⑬ 阿波晩茶づくり〜茶摘みから樽詰めまで〜

案内人:中野公未(料理人/加工係)
阿波晩茶は、夏場の暑い時期に厚くなった茶葉を摘み、茹でて擦り、樽に詰めて乳酸発酵させてできるお茶。昨年、青井夫にお住まいの西さんや鬼籠野在住の永野さんらに教わってつくり始めたお茶ですが、飲んだ方から好評ですでに昨年製造分は完売しました。今年度、初めてワークショップのかたちをとり、一般の方にも参加していただけるようにしました。独特の製法をいっしょに体験することは、まさに神山の「食文化」に触れる機会だと思っています。茶葉を発酵させた後の残った液で「晩茶染め」もやってみました。汚れが目立つエプロンや手ぬぐいなどを染めると、また気持ちよく使えるようになります。かま屋で薄黄色のアイテムを身につけているメンバーを見かけたら、それはきっと「晩茶染め」したアイテムです。

当日の様子はこちらからご覧ください。

地産地食の学校⑭ 箸袋をつくろう〜神山で譲り受けた生地を使って〜

案内人:KULUSKA 藤本直紀さん・あやさん
箸袋は、その名のとおり箸を持ち運ぶための袋。「自分のお箸を使うとごはんがおいしく食べられる」と食事のたびに箸袋を取り出す友人の姿がとても魅力的に見えたので、箸をつくったあとは箸袋も自分でつくってみたいと思いました。KULUSKA の藤本さんに相談したところ「神山で譲り受けた生地でつくる箸袋」の提案をしてくださいました。「地産地食」は「食」を中心にした循環ですが、この箸袋は「衣」を中心にした循環。そんなお話も伺えたことで「食」の循環についても改めて考えるきっかけが生まれました。

当日の様子はこちらからご覧ください。

「地産地食の学校」では、毎回の最後に「いっしょに食べる」時間があります。ごはんやおやつの周りに人がいる。いっしょにつくった人たちと、いっしょに食べる。ホッとする時間です。

みんなでごはん

一年半ぶりに再開した「地産地食の学校」ですが、秋以降の開催は未定です。「一からつくるお弁当」シリーズ【つくる編】のあとなので、やっぱり【食べる編】ができればいいかなと考えつつ、何かいい考え浮かんで来ないかなーと宙をふらふらとさまよってもいます。軸にあるのは神山町の「食文化」を真ん中に、町内外のみなさんと「おいしい」「楽しい」時間を共有できる場。一回一回の場を今後も丁寧につくっていきたいと思います。

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9月は神山杉のお弁当箱、あづま袋をつくります。興味をお持ちの方は、ぜひメンバーまでお声がけください。お申し込みはwebまたは店頭で受け付けております。

地産地食の学校⑮ “神山杉の曲げわっぱ” をつくろう

詳細・お申し込みはこちらから。

地産地食の学校⑯ あづま袋をつくろう〜お弁当にも かまパンにも〜

詳細・お申し込みはこちらから。

みなさんとご一緒できる機会を楽しみにしています!

この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

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