売り先への不安を和らげる鍵
ビニールハウスでの野菜栽培

つなぐ農園社会的農業育てる

白桃薫(農業長)
白桃薫(農業長)

 農業長の白桃です。今回は、つなぐ農園で野菜生産の柱となった、ビニールハウスでの野菜の栽培について、話をしたいと思います。

現在、つなぐ農園では、7棟のビニールハウスにて、小松菜、水菜、春菊、わさび菜、からし菜、ルッコラ、ケール、ラディッシュの8種類の野菜を年間を通じて栽培をしています。これらの野菜は、かま屋では常にメニューに組み込まれている、利用頻度の高い野菜です。特に、冬の産食率を維持し、メニュー構成を豊かにするためには欠かせない野菜でもあります。

このビニールハウス栽培を始めたのは、約1年半前の2017年の冬でした。2棟の中古ビニールハウスを移築し、プラス私の家のハウス2棟をつなぐ農園に貸出し、4棟からスタートしました。その後、農作業の閑散期に少しずつ建て増していき、7棟までになり、ようやく年間をとおした生産が可能となりました。

最初、私は露地栽培よりも簡単じゃないかと思い、始めたハウス栽培ですが、実はとても奥が深く、難しいものでした。それは、人工的に生育環境を整えてやることの難しさです。例えば、水やりは、天候、気温、成長段階を見極め、その時々の潅水量を決めていきます。また、まんべんなく水をやることが必要なため、複数の水やりチューブを組み合わせ、できるかぎり水ムラができないような工夫も必要となります。その細やかな配慮の積み重ねが美味しい野菜につながります。その他にも、換気による温度管理、作業時間の大部分を占める収穫・調整などに関してもさまざまな知識が不可欠です。

このような知識と技術は、我々だけつくりあげたのではなく、フードハブ・プロジェクトの取り組みに共感し、設立当初からつなぐ農園の野菜の技術指導をしてくれている、奈良で有機農家をしている柏木さんの指導があってのことです。毎週1回ある定例ミーティング時には皆で、その週の実践したことを振り返り、改善すべき点を考え指導してもらい、それをまた実践する。これをずっと繰り返すことにより、ようやく安定的に一定以上の品質を保った、野菜を生産し続けられるようになってきました。

そして今、この安定的な野菜の生産出荷が「新規就農者の販売面をサポートすることになるのでは」と期待しています。現在、これらの野菜はかま屋で使いきれなかった余剰分を、町外の有機野菜を扱う、八百屋さんや飲食店の方々直接販売をしています。特に需要の大きい葉物野菜は、年間を通して安定的な需要があります。しかし、保存がすることができない葉物野菜は、週に数度出荷します。実はそこにチャンスが眠っていて、その発注の際、季節路地野菜や果樹等も同時に発注があります。そこをうまく利用し、つなぐ農園の葉物野菜を軸として、農家さんが作る野菜を合わせてお客様へ提案し、同梱で発送する。個人農家さんでは難しい、売り先の確保の一部を我々が担っていけるのではないかと考えています。農家さんはできる限り良いものを作ることに集中し、フードハブ・プロジェクトが、かま屋で使うことと同時に、葉物野菜とともに営業を行い、受注を取る。そうすることで、多くの新規就農者が抱えている、「売り先への不安」を少しでも和らげることができるのではないかなと考えています。

まだまだ、学ぶことの多いこのビニールハウスでの野菜の栽培、少しでも地域の皆さんや、野菜を必要としてくれる人に、より美味しく食べてもらえるよう、努力をしていきたいなと考えています。

この日誌を書いた人

白桃 薫

フードハブ農業長/神山つなぐ公社 のうぎょう担当
白桃 薫 (しらもも かおる)

農業長。神山町出身。一般社団法人 神山つなぐ公社所属。神山町役場の職員として11年間勤務。暮らしや仕事中で、日々神山の農業に対して危機感を抱いていた。神山町の地方創生ワーキンググループで考えたフードハブの原案に「これしかない」と思い実行を決意。現在は、神山つなぐ公社の、のうぎょう担当として立ち上げに参画し、実際に田畑に出て農業に取り組んでいます。

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