地域で学び、地域と育つ
城西高校神山校のいま

神山のこと

1年生オリエンテーション合宿より
1年生オリエンテーション合宿より

こんにちは、神山つなぐ公社の森山です。

 神山校の社会人講師として学校設定科目「神山創造学」の授業を担当しています。今回は神山校で進んでいる地域連携の授業や今年から新設されたコースが生まれた背景や内容についてお伝えしたいと思います。

 神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」がつくられた2016年のはじめ頃、「生徒たちをもっと地域に出して学ばせたい」という先生たちの思いを聞く機会があり、町民や町役場職員からも「高校の管轄は県教育委員会だけれども、これからのまちの状況を一緒につくっていけるといい」といった声が上がりました。そこから、造園や農業を学ぶ専門課程と、神山町の取り組みとを掛け合わせた〝地域学〟のようなものができるのではないか、と互いの思いが一致し、一気に話が進み始めます。

 そして、大埜地の集合住宅の植栽づくり「どんぐりプロジェクト」、地域の食材を使った「お弁当プロジェクト」、授業外では高齢者の困りごとを助ける「孫の手プロジェクト」がスタート。さらに、地域と協働した専門的な授業を円滑に進めるためには、地域で活動する意義の理解や、自主性、協調性、コミュニケーション能力といった資質を育んでいくことが1年生の段階から重要であるとして、2017年度より学校設定科目「神山創造学」という神山校オリジナルの授業がはじまりました。

「神山創造学」のはじまり

 生徒たちは授業の中で、初めて間近で滝を見たり、コンニャクを芋から作ったり、スダチの歴史を聞かせてもらったり、たくさんの「初めて」を経験しています。ネットで検索すれば知ったつもり・見たつもりになれる時代だからこそ、五感をフルに使って人や自然に出会ってもらいたい。人の関わりの中で、自分の頭で物事を考え、行動する力を育んでほしい。そんな願いを、この授業には込めています。今年で3年目ですが、これまでに町歩きやしごと体験などで地域のたくさんの方々に関わっていただいてきました。

海老名さんから教わるこんにゃくづくり

町歩き(豆ちよさん)

どんぐりプロジェクト

石積み

 2年生になると、テーマごとに分かれてチームでのプロジェクトに取り組みます。今年は神農祭(11月にある収穫祭)をもっと地域の人たちに楽しんでもらえるように盛り上げる!と意気込んでいます。どうぞ、お楽しみに!

 こういった授業の蓄積を背景に、時代の変化を捉えつつ地域の特性を活かした学校として新たなスタートを切ろうと、今年度学科再編を行いました。校名は「神山分校」から「神山校」へ。新しい学科は、「地域創生類」。2年次には「環境デザインコース」か「食農プロデュースコース」に分かれます。高校生たちには、多様な人々が暮らし、国内外から多くの人が訪れるこのまち全体をキャンパスに、これからの「食・農」「環境」をめぐる感性と技術を学んでもらいたいと考えています。

 造園土木科の流れを引き継ぐ「環境デザインコース」は、造園教育を軸に地域の特性や景観への理解を深めます。造園の知識や技術を習得し、農林業を基盤とした山村や河川流域環境の保全・再生にも取り組むことを通して、地域社会の担い手となる知識や技能の習得を目指します。生活科を引き継ぐ「食農プロデュースコース」では、安全・安心な農産物の生産から加工調理、商品開発・販売までの実践を通じた持続可能な農業体系や環境保全型農業の概念を学び、食と農業を次世代につなぐ知識や技能の習得を目指します。フードハブ・プロジェクトの取り組みとも親和性が高く、今後は一部の耕作放棄地を蘇らせて小麦の栽培を始めようという計画を話し合っているところです。

神山小麦の収穫

 高校が地域の景観創造の一役を担い、地域の生産・交流拠点になっていくことは公立の学校の在り方を再定義する試みでもあると思っています。自分の体験を話すと、私自身、地域との関わりに特に関心を持たずに生きてきましたが、大学生のときに半年間暮らした島根の小さな島で、社会は「手づくり」であって、ものごとはつながっている、ということを肌で教えてもらいました。高校生たちが、学校を飛び出して、人や物事のリアルな関係性の中で何かを発見したり挑戦したり、時には失敗しながら学びを深めていけるといいなと思っています。

2019年度 1年生「神山創造学」オリエンテーションより

 また、この新たなスタートとともに、遠方や県外からの入学生を受け入れ、神山町に住みながら学校へ通えるように、神山町が暮らしの環境を整えました。この4月から、静岡県や鳴門市から入学してきた4名が元教職員住宅で共同生活をしています。自分たちで日々の食事を作っており、何を食べようかといつも献立を考えてる“食いしん坊”さんたちです。(笑)見かけたらぜひ声をかけてあげてください!

この日誌を書いた人

いただきます編集部


いただきます編集部 (一番、食いしん坊です。)

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