会社って、だれのもの?を「全体会議」から考える

全体会議食育

「みんなでつくる全体会議」の一コマ
「みんなでつくる全体会議」の一コマ

こんにちは。食育係の樋口です。

昨年10月から取り組んでいる「みんなでつくる全体会議」について、 いま思っていることを一人称で書いてみることにしました。

会社はだれのもの?

「会社ってだれのものなんだろう?」と真鍋(支配人)に投げかけられたのは、会社を主語に話をしていたときのこと。「(会社を)自分ごととして考えろ」というメッセージだったのかもしれませんが、わたしは得体の知れない「会社」に対立(!)していた時期。自分の中に答えは持っていませんでした。それから様々なプロジェクトに関わり周りの人たちとの対話を重ねていくなかで、わたしの考え方や捉え方も随分変化したきたように思います。

食育の取り組みから

田んぼや畑が、みんなの居場所になるまで」はちょうど1年前に書いた記事です。

小学校5年生と取り組んでいるもち米栽培「田植え」

これまで、町内の保育所や学校の先生方と連携しながら様々な食育の活動を展開してきました。子どもたちや先生方といっしょに「育てる、つくる、食べる、伝える」活動に取り組めることはとてもうれしく、やりがいを感じています(農業チームのおかげ)。いずれ、田んぼや畑が遊び場や学び場、異なる世代の人たちが集まる憩いの場になっていけばどんなに楽しいか。そこで「野菜づくり、やってみたい!」「田んぼで米育てたいなー」と言いながら子どもたちが勝手に遊び始めたとしたらどんなにワクワクするか。そんな会話を茂さん(FHP農業指導長)や白桃(農業長)と交わしたこともあります。

田んぼや畑が居場所や遊び場になるということは、そこを身近に感じる人や興味をもつ人がいて、「遊んでみたい!」「行ってみたい!」と思う状況が生まれているということ。その状況が生まれるには…と考えていくうちに、「もっと身近なところからつくっていきたい」という自分の “思い” があることに気づきました。

2018年10月 「風越コラボ」に参加して書いた一人作戦会議の模造紙…この時点では言葉を並べているだけで何も見えず、ボヤ〜っとしていました。

信頼ベース

昨年、会社の研修として参加した「風越コラボ」は、【一人ひとりが「自由だ、幸せだ」という実感を持つ社会のために、どんな学校や教育がありえるのか、多様な人たちが集まって試行錯誤しながら実験する場(Collaboration Laboratory)】です。参加者のみなさんと直接会えたのは4回でしたが、回の間では実践の振り返りを行き来しつつ、半年間を過ごしました(2018年6月〜2018年12月)。その時お会いした岩瀬直樹さん(軽井沢風越学園副理事長/ごりさん)の影響を受け、わたしの “思い” はぐんぐん加速しました。ごりさんは埼玉県の公立小学校で22年間教諭として勤め、“信頼ベース” のクラスづくりに取り組まれてきた方。念願叶って昨年は神山にもお越しいただき(その時のレポート:岩瀬さんをゲストに迎え「先生みんなでごはん」を開催しました)、仕事のこと、学校のこと、自分のこと、たっぷりお話しさせていただく時間がありました

会社にも “信頼ベース” の考え方は必要ですが、それは目に見えず、売上のように数値化することもできません。放っておいて勝手につくられるものでもなさそうです。よりよくしていくために、まずは「みんなでつくる全体会議」で社内の風通しをよくしていこうと考えました。根拠はないけれど「よくしていける」という明るい気持ちになれたのは、(学校の)クラスづくりと(社内の)チームづくりの共通点をイメージできたからだと思います。「聞く」ことが中心の全体会議から「みんなでつくる」全体会議に変えて2回目が終わった時期でした。

全体会議より

「みんなでつくる全体会議」って?

「みんなでつくる全体会議」は「やってみたい!」と手を挙げた有志の運営メンバーが入れ替わりながら企画しています。

会議の中身は、アンケートで上がってきた内容を取り上げたり、これ一緒にやってみない?と投げかけたり、4人組になって話をしたり。今は、それぞれの思いや考えを出せる場であること、やってみたいことにチャレンジできる場をつくることの2点を軸にしています。これまでに、かま屋のコーヒープロジェクト、駐輪場づくりプロジェクト、マルシェ出店プロジェクトなどが立ち上がって実行され、メンバーらの「やってみたい!」が共有される場にもなっています。

現在7回目が終わったところですが、これでいいのか、よくないのか、正直よく分かりません。メンバー全員が同じ方向を向いているわけでもありません(“同じ方向を向いていない”というあり方に救われています)。運営メンバーに7回連続で立候補しているのが白桃(農業長)とわたし。ゼロからの道のりを一緒に進めてきたからこそできるやりとりもあり、その積み重ねが “信頼” につながります。かつては “会社” を主語にして話をしていたわたしですが、自分も含め “ひと” を起点にモノゴトを考え始めていることは、この半年間の大きな変化です。

メンバーにとってよりよいことが、まちで暮らす人やお店に来てくださる人たちにとってもよりよいことになるよう、みんなで知恵を出し合い、行きつ戻りつしながら進んでいる真っ只中。まだまだやれることはあるだろうなぁと思うし、メンバーらの意見や考えがもっと反映されるような会議体にしていきたいとも思っています。「これが全体会議だ!」なんて枠を決めるわけでもなく、その時々に集まったメンバーであーだこーだと言いながらみんなでよりよい全体会議をつくっていければ、それがフードハブそのものになっていくのかもしれません。

レモンを手にひとりずつ話している場面

今いる場所をよくしていく

Food Hub Project の掲げる合言葉「地産地食」は、生産者の方々やわたしたちメンバーらが日々体感し、お客様に食べ支えていただき、地域の保育所や学校で実感できる機会をつくり、イベント等で考える場をつくり…多くの人たちと体現していこうとしています。

自分で育てた野菜をもぐもぐと食べる子どもたちが食べ物や地域に愛着をもつように、今いる場所をよりよくしていこうと試行錯誤することは、その場所への愛着を育んでいくことなのだと思います。自分や自分たちから周りの人たちとの関係性を育んでいくこと(全体会議、社内コミュニケーション)、それぞれの良さや得意分野を生かしながら持ち場をよりよくしていくこと(かま屋、かまパン、加工場、農業、食育)、そのどちらもを大事にして進めていけるといいなぁと思うのです。

「会社はだれのもの?」と投げかけられたら、わたしは「一人ひとりが考えていけるもの」「自分たちでよくしていけるもの」と答えます(所有物ではない)。

開いていくのも閉じていくのも自分次第。ここに集まったメンバーたちと、楽しみや喜び、辛さや苦しみ、そして可能性も分かち合えるこの場所に愛着がわいてきたフードハブ生活4年目の春。この先の展開がまったくわからないところにおもしろさを感じています。

会議中の一コマ

「みんなでつくる全体会議」の毎月のレポートは、フードハブのホームページ内「活動日誌」で更新しています。会議の詳細はぜひともwebでご覧ください。

この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

前へ次へ 閉じる