13名の農家さん、かま屋へ野菜を卸す
(神領小学校1年生の取り組み)

授業レポート食育

神領小学校1年生、(写真後列右から)武市先生、松本、白桃
神領小学校1年生、(写真後列右から)武市先生、松本、白桃

食育係の樋口です。
今回は、神領小学校1年生の取り組みをご紹介します。

1年生13名の子どもたちが野菜の種や苗を植えたのは9月の上旬。子どもたちで食べきれない場合は「かま屋に卸す」っていうのもいいねと話しながら、多品目を育てることにしました。

小さな種や苗が台風や寒さを乗り越え(弱ったものは農業チームが植え直しをしてくれて)、12月には収穫できるまでに成長。

*栽培方法:フードハブの栽培基準と同じく、無農薬・無化学肥料で栽培

おとなの作戦会議

収穫の直前、1年生担任の武市先生と白桃(農業長)、加地(かま屋料理人)、樋口でミーティングをしました。当初は仮案だった「かま屋に卸す」が表に出てきて…。

神領小学校でのミーティング

せっかく育てた多品目野菜を生かさない手はない、と「プロ(かま屋料理人)に料理してもらって食べる」で満場一致。

  • 収穫した野菜をかま屋に卸す(1年生)
  • 神領小の野菜をもりもり使ったランチをつくる(かま屋料理人)
  • 1年生みんなでランチを食べに来る(受け取った野菜代金を使って)

という活動の流れが決定しました。

こうして1年生に「農家さん」の役割を担ってもらうことになりました。でも、農家さんの仕事って、育てた野菜を収穫して食堂へ届けるだけじゃないんですよね。

地域のなかで、育てて、つくって、食べるということ。

大人がいつもやっていることを「見える化」しようと、1年生の「農家さん」たちも発注や野菜代金の受け渡しを含めて全部やることにしました。

ものごとは全部続いて(つながって)いるということを子どもたちなりに感じらえるといいなぁと思ったから。今回であれば、野菜を育てることからはじまり、それが調理されてみんなの口に届くまで。頭で理解できるのはもうちょっと先かもしれないけれど、小さい頃から当たり前に目にしているものやその環境が子どもたちの根っこになっていく。そう信じてやっています。

*ちなみに、昨年の1年生はみんなでスープとサラダを作って食べたのでした >> こちら

1年生に野菜の発注をする加地

後日、加地は「採れる野菜をもりもり使ったランチメニュー」を考え、1年生の子どもたちに野菜の「発注」の連絡をしました。発注を受けた子どもたちは、電話口で野菜の名前をメモするため復唱したり、わからないことは加地に尋ねたり、そういうやりとりがあったそう。

さぁ。

大事な任務を受けた「農家さん」のドキドキが始まりました。

雨が降っても雪が積もっても、かま屋に届ける野菜を収穫せねばなりませんよ。

「農家さん」たち、大活躍

「どうか晴れますように…」と願いながら迎えた収穫の日。

神山町の朝はとても寒く、レタスは半分凍った状態。口から出るのは白い息。でもでも、準備をしているあいだにお日様がキラキラと姿をあらわし、収穫日和となりました。

おはようございまーす!

白桃薫(農業長)

武市先生の「お客さんに届ける野菜だからね」という声かけで、よりやさしく、よりていねいに、野菜が収穫されていきました。

ビーツ

人参(オレンジ、白、黄、紫)

写真左:松本直也(農業研修生)

白桃と松本の作業の様子をじっと見つめる子どもたち。

野菜についた土を落としたり、外の葉をとったりするのも大事なお仕事です。

人参の色(品種)によって、成長に差がありました。(量で比べると明らか!)

野菜を卸す:「のうひん」

作業が終わりきれいになった野菜たち(12品目)をかま屋へ届けます。「野菜を食堂に届けることな、難しい言葉で『 の う ひ ん (納品)』って言うんよー」と白桃。

加地(かま屋料理人)からは、「遅くても11時までには届けて!」と言われていた「農家さん」たち(と農業チーム)。

間に合ったーー!!(ほっ)

納品した野菜:大根(2kg)大根葉(1.5kg)ビーツ(全量)ロメインレタス(4kg)リーフレタス(2kg)バターヘッドレタス(600g)オークリーフ(1kg)赤リーフレタス(800g)オレンジ/白/黄人参(3kg)紫人参(500g)間引き人参(葉付き500g)

納品した野菜と引き換えに、かま屋から「野菜代」を受け取りました。(¥5,000以上のお金、子どもたちにはどう感じられたのでしょうね〜)

これにて「農家さん」のお仕事完了!!

思った以上にたくさん収穫できたので、それぞれの家に持ち帰って食べてもらえたようです。

野菜たちが大変身

納品された野菜はかま屋料理人らメンバーたちによってみるみる姿かたちを変え…

加地美咲(かま屋料理人)

ビーツ。すごく鮮やかな色が出ています。

翌日、おいしいランチになりました。

12月14日(金)かま屋のお昼ごはん

この日のメニューを一品ずつ紹介しますね。

神領小でとれた野菜の農園サラダ

ビーツと野菜の白和え

にんじんと干し海老のかき揚げ

ロメインレタスと豚バラ肉のウスターソースソテー

かつおと大根の甘辛炒め

・大根葉と鰹のふりかけ

+釜炊きごはん、味噌汁

「農家さん」たち、この日は一番乗りでかま屋に到着し、自分たちが届けた野菜の変身っぷりをチェック!

いつもは上段にのっているおかずを一段下におき、1年生が見やすく、取りやすく並べてくれたのはかま屋メンバー。

「いただきます」

まちの人たちも「1年生が育てた野菜」を食べに来てくれました。

産食率

神山町産食率:56.3%

神領小産食率:46.9%

この日のランチの46.9% が神領小学校で採れた野菜で占められているということになります。

「ワクワクがとまらない」とはこういう時に使う言葉なんだろうな。

授業で育てた野菜がまちの食堂で提供されるって、改めて、すごくないですか。

「やってみよう!」と思う先生と、楽しみつつ協力体制整えてくれる農業チーム(この企画、特にキレッキレだったのは白桃!)、そして小学生と初コラボとなったかま屋チーム、みんながそれぞれの場で1年生シフトを組み、挑みました。いつもと違うオペレーションや段取りもなんのその。白桃、松本、加地、かかわったメンバーらがそれぞれに「楽しかったー!!」と言ってるのもとてもよくって…(ありがとう)。

食べものからつながる輪

子どもたちがいて、まわりにワクワクしている大人たちがいて、見守ってくれる地域の方々がいて…食べものを通してつながる輪。

これからも、子どもも大人もワクワクすることをたくさんやっていけるといいなー。そうそう、やろうと思えばなんでもできる!今回はその出発点かもしれません。ワクワクをかたちに。フードハブがその力になれるのなら、うれしい。

先生方、そして地域のみなさん、2019年もどうぞよろしくお願いいたします!!

この日誌を書いた人

樋口明日香

NPO法人まちの食農教育
樋口明日香 (ひぐち あすか)

前フードハブ 食育係。徳島市出身。神奈川県で小学校教員として働いたあと2016年からフードハブに参画。2022年3月より現職。まちの小・中学校、高校、高専の食と農の取り組みにかかわりながら「みんなでつくる学校食」を模索中。 https://shokuno-edu.org/

その他の活動

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